ぱいおつ日記

ぱいおつは終わりました。

自然数を見つめ直しました

こんにちは,ぱいです.

無事進級できて4回生になりました.ほっとしてます.

 

このあいだ数学の講演をする機会があり,ペアノの公理から出発して自然数の和や積を定義する話をしました.

せっかくなので,ここにもそういう話を書いておこうと思います.

記事の最後の方に,講演会のノートのpdfも貼っておくつもりです.

 

 

さて,自然数といったら何を思い浮かべますか.

たぶん,「0,1,2,3,$\dots$」と続いていくものというふうに思うと思います.

でも,じゃあ,「0,1,2,3,$\dots$」と続いていくというのは数学的に言うとどういうことなのでしょうか.

自然数のこの特徴は,19世紀にイタリアの数学者ペアノによって次のように述べられました.つまり,次のペアノの公理と呼ばれるものをみたすものを自然数と呼ぶことにしました.

 

定義 (ペアノの公理). 集合 $\mathbb{N}$ と $0$ と呼ばれるものと写像 $f:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ が次の4つをみたすとき,$(\mathbb{N},0,f)$ はペアノの公理をみたすといい,$f(n)$ を $n$ の次の元と呼ぶ( $f(n)$ は $n+1$ のような気持ち).

 (i) $0\in\mathbb{N}$ である.

 (ii) $f$ は単射である.

 (iii) $0\notin f(\mathbb{N})$ である.

 (iv) $A\subseteq\mathbb{N}$ は $0\in A,\ f(A)\subseteq A$ なら $A=\mathbb{N}$ となる.

 

これは,自然数というものが $0\mapsto f(0)\mapsto f(f(0))\mapsto f(f(f(0)))\mapsto\dots$ と順番に列のように並んだ感じに得られて,(ii)はまっすぐ並んでる横から変なものが割り込んでこないということを述べています.

(i)と(ii)は,その列の端っこが $0$ と呼ばれるものであるということを言っています.

(iv)は数学的帰納法のことです.

数学的帰納法とは何だったか思い出してみると,「条件 $P$ について,$n=0$ で $P$ が成り立ち,$n=k$ で $P$ が成り立てば $n=k+1$ でも $P$ が成り立つとき,任意の $n\in\mathbb{N}$ で $P$ が成り立つ」というものでした.

これは,$A=\{k\in\mathbb{N}\mid n=k$ で $P$ が成立$\}$とすると「$0\in A,\ k\in A\Rightarrow f(k)\in A$」ということで,(iv)と同じであると分かります.

 ペアノの公理は英語で Peano Axioms というので,以下 P.A. と略します.

また,以下特にことわらない限り $(\mathbb{N},0,f)$ は P.A. をみたすものとします. 

 

さて,ここで便利な定理を紹介しておきましょう.

 

定理1.集合 $X$ と元 $a\in X$,写像 $g: X\to X$ に対して,次のような写像 $\varphi:\mathbb{N}\to X$ がただひとつ存在する.

 (i) $\varphi(0)=a$ である.

 (ii) $\varphi(k)$ まで定義されているとき,$\varphi(f(k))=g(\varphi(k))$ である.

 

証明の前に,この定理の意味を見てみましょう.

$X$ の世界で $g(x)$ を $x$ の次の元のようなものだと思ってこの定理を眺めてみると,(i)は $X$ の世界の端っこのようなものが $a$ であるということを,(ii)は $k$ の次の元は $\varphi(k)$ の次の元のようなものに対応しているということを述べています.

では,証明をしていきましょう.

 

(証明)

まず,条件をみたす写像の存在を示す.

 $A\subseteq\mathbb{N}\times X$ についての次の2つの条件を☆とする.

 (☆1) $(0,a)\in A$ である.

 (☆2) $(k,x)\in A$ なら $(f(k),g(x))\in A$ である.

 ☆をみたす集合すべての共通部分を $B$ とする.

$B$は☆をみたすことがすぐわかるので,$B$は☆をみたす最小の集合である.(この事実を後で使うので△と呼ぶことにする.)

写像 $p:B\to\mathbb{N}$ を $p( (n,x) ):=n$ で定める.

 

この $p$ が全射であるということを示す.

$p( (0,a) )=0$ より $0\in p(B)$ である.また,$k\in p(B)$ のときある $x\in X$ で $(k,x)\in B$ だから $(f(k),g(x))\in B$ で $p( (f(k),g(x)) )=f(k)$ となるので $f(k)\in p(B)$.よって,P.A.(iv)より $p(B)=\mathbb{N}$ となる.

つまり $p$ は全射である.

 

次に,この $p$ が単射であることを示す.

そのためには,「$\forall(k,x),(l,y)\in B,\ p( (k,x) )=p( (l,y) )\Rightarrow(k,x)=(l,y)$」つまり「$\forall(k,x),(l,y)\in B,\ k=l\Rightarrow (k,x)=(l,y)$」を示せばよい.つまり,「\forall k\in\mathbb{N},\ (k,x),\ (k,y)\in B\Rightarrow x=y」を示せばよい.

そこで,$C:=\{k\in\mathbb{N}\mid(k,x),\ (k,y)\in B\Rightarrow x=y \}$ とする.

$0\in C$ を背理法で示す.

$0\notin C$ と仮定すると,ある $x\in X$ で $(0,x)\in B$ だけど $x\neq a$ となる.

$B$ から $(0,x)$ を取り除いた集合を $B'$ とすると,この $B'$ も☆をみたすことがすぐわかる.

ところが $B'\subset B$ なのでこれは△に矛盾する.よって $0\in C$ である.

さらに $k\in C\Rightarrow f(k)\in C$ も背理法で示す.

ある $k\in\mathbb{N}$ で $k\in C$ だけど $f(k)\notin C$ となると仮定する.

$p$ は全射だったから $k$ に対してある $x\in X$ で $(k,x)\in B$ となり,$(f(k),g(x))$ である.

今 $f(k)\notin C$ だから,ある $y\neq g(x)$ で $(f(k), y)\in B$ となる.

$B$ から $(f(k),y)$ を取り除いた集合を $B''$ とする.

$B''$ は $B$ より小さいので,△より,$B''$ は☆をみたさない.

P.A.(iii)より $0\neq f(k)$ なので,$(0,a)\in B''$ で(☆1)はみたされている.よって,$B''$ は(☆2)をみたさない.つまり,ある $(h,z)\in\mathbb{N}\times X$ で $(h,z)\in B''$ だけど $(f(h),g(z))\notin B''$ となる.ところで $(h,z)\in B$ より $(f(h),g(z))\in B$ で,$B$ から取り除いた元は $(f(k),y)$ だけだったから,$(f(h),g(z))=(f(k),y)$ である.P.A.(ii)より $f$ は単射だから $h=k$ となり,今 $k\in C$ だったから $x=z$ となる.よって $g(x)=g(z)$ となるが,$g(z)=y$ と $y\neq g(x)$ は矛盾する.

したがって $k\in C\Rightarrow f(k)\in C$ となる.

よって,P.A.(iv)より $C=\mathbb{N}$ となる.つまり $p$ は単射である.

 

以上から $p$ は全単射で,逆写像 $p^{-1}$ が存在する.

$q: B\to X$ を $q( (n,x) ):=x$ で定めて,$\varphi:\mathbb{N}\to X$ を $\varphi:=p^{-1}\circ q$ とする.

つまり,$\varphi(n)$ とは,$(n,x)\in B$ となる $x$ のことである.

$p( (0,a) )=0$ より $\varphi(0)=a$ である.

また,$\varphi(k)$ まで定義されているとき $(k,\varphi(k))\in B$ より $(f(k),g(\varphi(k)))\in B$ より $\varphi(f(k))=g(\varphi(k))$ である.

つまりこの $\varphi$ は定理の条件をみたしている.

 

今度は,このような写像がひとつしか存在しないことを示す.

$\varphi$ と $\varphi'$ がともに定理の条件をみたしているとする.

$\varphi=\varphi'$ となることを示せばよい.つまり,$\forall n\in\mathbb{N},\ \varphi(n)=\varphi'(n)$ を示せばよい.

そこで,$D:=\{n\in\mathbb{N}\mid\varphi(n)=\varphi'(n) \}$ とする.

$\varphi(0)=a,\ \varphi'(0)=a$ より $0\in D$ である.

$n\in D$ のとき $\varphi(f(n))=g(\varphi(n))=g(\varphi'(n))=\varphi'(f(n))$ より $f(n)\in D$ となる.

よって,P.A.(iv)より $D=\mathbb{N}$ となる.$■$

 

この定理は便利なので後でよく使います.

 

さて,ペアノの公理をみたす $\mathbb{N}$ の元を自然数と呼ぼうということでしたが,そのような集合がいろいろあったら困りますよね.思い浮かべてる自然数が人によって違ったら不便です.

でも,ペアノの公理をみたす集合は本質的にひとつしか存在しないということが次の定理によって分かり,安心できます.

 

定理2.$(\mathbb{N},0,f)$ と $(\mathbb{N}',0',f')$ がともにP.A.をみたすとき,次のような全単射 $\varphi:\mathbb{N}\to\mathbb{N}'$ がただひとつ存在する.

 (i) $\varphi(0)=0'$ である.

 (ii) $\varphi(k)$ まで定義されているとき $\varphi(f(k))=f'(\varphi(k))$ である.

 

(証明)

$\varphi$ の存在と一意性は,定理1で $X=\mathbb{N}',a=0',g=f'$ とすればよい.

また,同じようにして,次のような写像 $\varphi'\mathbb{N}'\to\mathbb{N}$ の存在も分かる.

 (i) $\varphi'(0')=0$ である.

 (ii) $\varphi'(k')$ まで定義されているとき $\varphi'(f'(k'))=f(\varphi'(k'))$ である.

さて,$A:=\{n\in\mathbb{N}\mid\varphi'(\varphi(n))=n \}$ とする.

$\varphi'(\varphi(0))=\varphi'(0')=0$ より $0\in A$ である.

$n\in A$ のとき $\varphi'(\varphi(f(n)))=\varphi'(f'(\varphi(n)))=f(\varphi'(\varphi(n)))=f(n)$ より $f(n)\in A$ となる.

以上よりP.A.(iv)より $A=\mathbb{N}$ となる.同様にして,$\{n\in\mathbb{N}\mid\varphi'(\varphi(n'))=n' \}=\mathbb{N}$ となる.

よって$\varphi'$ は $\varphi$ の逆写像である.

したがって$\varphi$ は全単射である.$■$

 

定義(自然数).ペアノの公理をみたす $\mathbb{N}$ の元を自然数と呼ぶ.

 

さて,無事に自然数が定義できたので,今度は足し算を定義していきましょう.

そのために,まずは次の定理を見てみましょう.

 

定理3.各 $n\in\mathbb{N}$ に対して,次のような写像  $σ_{n}:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ がただひとつ存在する.

 (i) $σ_{n}(0)=n$ である.

 (ii) $σ_{n}(k)$ まで定義されているとき $σ_{n}(f(k))=f(σ_{n}(k))$ である.

 

(証明)

定理1で $X=\mathbb{N},a=n,g=f$とすればよい.$■$

 

これは,$σ_{m}(n)$ で $m+n$ を定義しようという気持ちのものです.

そういう気持ちでこの定理を眺めてみると,(i)は $n$ に $0$ を足しても $n$ のままということを,(ii)は $n$ に $k$ の次の元を足すと $n+k$ の次の元と同じになるということを述べていると分かります.

では,この写像が普通の足し算っぽい基本的な性質をきちんとみたしてくれているか確認してみましょう.

 

定理4.任意の $l,m,n\in\mathbb{N}$ で次が成り立つ.

 (i) (結合法則) $σ_{σ_{l}(m)}(n)=σ_{l}(σ_{m}(n))$

 (ii) (交換法則) $σ_{m}(n)=σ_{n}(m)$

 (iii) (簡約法則) $σ_{l}(n)=σ_{m}(n)\Rightarrow l=m $

 

(証明)

(i)

各 $l,m\in\mathbb{N}$ に対して $A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{σ_{l}(m)}(n)=σ_{l}(σ_{m}(n)) \}$ とする.

\begin{eqnarray}σ_{σ_{l}(m)}(0)&=&σ_{l}(m)\\&=&σ_{l}(σ_{m}(0))\end{eqnarray}

より $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき,

\begin{eqnarray}σ_{σ_{l}(m)}(f(n))&=&f(σ_{σ_{l}(m)}(n))\\&=&f(σ_{l}(σ_{m}(n)))\\&=&σ_{l}(f(σ_{m}(n)))\\&=&σ_{l}(σ_{m}(f(n)))\end{eqnarray}

より $f(n)\in A_{l,m}$ である.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる.

 

(ii)

$A:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{n}(0)=σ_{0}(n) \}$ とする.

当然 $0\in A$ である.

また, $n\in A$ のとき

\begin{eqnarray}σ_{f(n)}(0)&=&f(n)\\&=&f(σ_{n}(0))\\&=&f(σ_{0}(n))\\&=&σ_{0}(f(n))\end{eqnarray}

より $f(n)\in A$ となる.

よってP.A.(iv)より $A=\mathbb{N}$ となる.

また,$B:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{n}(f(0))=σ_{f(0)}(n) \}$ とする.

$f(0)\in A$ より $0\in B$ である.

また, $n\in B$のとき

\begin{eqnarray}σ_{f(n)}(f(0))&=&f(σ_{f(n)}(0))\\&=&f(f(n))\\&=&f(f(σ_{n}(0)))\\&=&f(σ_{n}(f(0)))\\&=&f(σ_{f(0)}(n))\\&=&σ_{f(0)}(f(n))\end{eqnarray}

より $f(n)\in B$ となる.

よってP.A.(iv)より $B=\mathbb{N}$ となる.

さて,各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $C_{n}:=\{m\in\mathbb{N}\mid σ_{m}(n)=σ_{n}(m) \}$ とする.

$A=\mathbb{N}$ より $0\in B_{n}$ である.

また,$m\in B_{n}$ のとき

\begin{eqnarray}σ_{f(m)}(n)&=&σ_{σ_{m}(f(0))}(n)\\&=&σ_{m}(σ_{f(0)}(n))\\&=&σ_{m}(σ_{n}(f(0)))\\&=&σ_{σ_{m}(n)}(f(0))\\&=&σ_{σ_{n}(m)}(f(0))\\&=&σ_{n}(σ_{m}(f(0))\\&=&σ_{n}(f(m))\end{eqnarray}

より $f(m)\in C_{n}$ となる.

よってP.A.(iv)より $C_{n}=\mathbb{N}$ となる.

 

(iii)

対偶「$l\neq m\Rightarrow σ_{l}(n)\neq σ_{m}(n)\ (n\in\mathbb{N})$」を示す.

$l\neq m$ なる $l,m\in\mathbb{N}$ を任意にとり,$A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{l}(n)\neqσ_{m}(n) \}$ とする.

まず,$σ_{l},\ σ_{m}$ の定義から $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき $f$ は単射だから $f(σ_{l}(n))\neq f(σ_{m}(n))$ つまり $σ_{l}(f(n))\neq σ_{m}(f(n))$ となり $f(n)\in A_{l,m}$ となる.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる. $■$

 

定義(自然数の和).$σ_{m}(n)$ を $m $ と $n$ の和と呼び,$m+n$ と略記する.

 

これでようやく胸を張って自然数の足し算を扱えるようになりました.

同じように自然数の掛け算も定義してみましょう.

 

定理5.各 $n\in\mathbb{N}$ に対して,次のような写像 $\pi_{n}:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ がただひとつ存在する.

 (i) $\pi_{n}(0)=0$ である.

 (ii) $\pi_{n}(k)$ まで定義されているとき $\pi_{n}(f(k))=σ_{n}(\pi_{n}(k))$ つまり $\pi_{n}(k+1)=\pi_{n}(k)+n$ である.

 

(証明)

定理1で $X=\mathbb{N},\ a=0,\ g=σ_{n}$ とすればよい. $■$

 

これも,$\pi_{m}(n)$ によって積 $m\cdot n$ を定義したいという気持ちの定理です.

では,最後にこの写像自然数の掛け算っぽく振る舞ってくれることを確認しましょう.

(もう足し算は普通に扱えることになったので,面倒なので+という記号を使います.

また,$f(0)$ のことを $1$ と略記します.)

 

定理6.任意の $l,m,n\in\mathbb{N}$ で次が成り立つ.

 (i) (分配法則) $\pi_{l}(m+n)=\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n)$

 (ii) (結合法則) $\pi_{\pi_{l}}(m)(n)=\pi_{l}(\pi_{m}(n))$

 (iii) (交換法則) $\pi_{m}(n)=\pi_{n}(m)$

 

(証明)

(i)

各 $l,m\in\mathbb{N}$ に対して $A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid \pi_{l}(m+n)=\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n) \}$ とする.

$\pi_{l}(m+0)=\pi_{l}(m),\ \pi_{l}(m)+\pi_{l}(0)=\pi_{l}(m)+0=\pi_{l}(m)$ より $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき

\begin{eqnarray}\pi_{l}(m+(n+1))&=&\pi_{l}*1+l\\&=&\pi_{l}(m)+(\pi_{l}(n)+l)\\&=&\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n+1)\end{eqnarray}

より $n+1\in A_{l,m}$ となる.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる.

 

(ii)

各 $l,m\in\mathbb{N}$ に対して $A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid \pi_{\pi_{l}(m)}(n)=\pi_{l}(\pi_{m}(n)) \}$ とする.

$\pi_(\pi_{l}(m))(0)=0,\ \pi_{l}(\pi_{m}(0))=\pi_{l}(0)=0$ より $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき

\begin{eqnarray}\pi_{\pi_{l}(m)}(n+1)&=&\pi_{\pi_{l}(m)}(n)+\pi_{l}(m)\\&=&\pi_{l}(\pi_{m}(n))+\pi_{l}(m)\\&=&\pi_{l}(\pi_{m}(n)+m)\\&=&\pi_{l}(\pi_{m}(n+1))\end{eqnarray} 

より $n+1\in A_{l,m}$ となる.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる.

 

(iii)

まず $A:=\{n\in\mathbb{N}\mid \pi_{0}(n)=0 \}$ とする.

当然,$0\in A$ である.

また,$n\in A$ のとき

\begin{eqnarray}\pi_{0}(n+1)&=&\pi_{0}(n)+0\\&=&0\end{eqnarray}

より $n+1\in A$ となる.

よってP.A.(iv)より $A=\mathbb{N}$ となる.

また,各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $B_{n}:=\{m\in\mathbb{N}\mid \pi_{n+1}(m)=\pi_{n}(m)+m \}$ とする.

当然,$0\in B_{n}$ である.

また,$m\in B_{n}$ のとき,

\begin{eqnarray}\pi_{n+1}(m+1)&=&\pi_{n+1}(m)+(n+1)\\&=&(\pi_{n}(m)+m)+(n+1)\\&=&(\pi_{m}(n)+n)+(m+1)\\&=&\pi_{n}(m+1)+(m+1)\end{eqnarray} 

より $m+1\in B_{n}$ となる.

よってP.A.(iv)より $B_{n}=\mathbb{N}$ となる.

さて,各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $C_{n}:=\{m\in\mathbb{N}\mid \pi_{m}(n)=\pi_{n}(m) \}$ とする.

$A=\mathbb{N}$ より $0\in C_{n}$ である.

また,$m\in C_{n}$ のとき,

\begin{eqnarray}\pi_{m+1}(n)&=&\pi_{m}(n)+n\\&=&\pi_{n}(m)+n\\&=&\pi_{n}(m+1)\end{eqnarray} 

より $m+1\in C_{n}$ となる.

よってP.A.(iv)より $C_{n}=\mathbb{N}$ となる. $■$

 

定義(自然数の積).$\pi_{m}(n)$ を  $m $ と $n$ の積と呼び,$m\cdot n$ や $mn$ と記す.

 

これで自然数の掛け算も使えるようになりました.

自然数には他にも大小関係とかいろんな構造が入っているので,暇なときに考えてみると楽しいかもしれません.

 

最後に,講演会で話したやつ(高校生向けに,自然数を $1$ からスタートした)のノートを置いておきます. 

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参考文献

彌永昌吉(1972) 『数の体系(上)』 岩波新書

 

 

*1:m+n)+1)\\&=&\pi_{l}(m+n)+l\\&=&(\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n