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ぱいおつ日記

ぱいおつは終わりました。

イデアルの準素分解の話

こんにちは. 最近は友達とのんびりアティマクを読んでます.

このあいだ4章の準素分解のところを発表しました.忘れないうちに何か書こーみたいな感じで何か書いていきます.

 

 

まず, 準素イデアルの定義.

$A$ が環, $\mathfrak{q}$ がそのイデアルで次をみたすとき,$\mathfrak{q}$ は $A$ の準素イデアルであるという.

$xy\in\mathfrak{q}$ なら $x\in\mathfrak{q}$ または $y\in\sqrt{\mathfrak{q}}$.

 これを言い換えると

剰余環 $A/\mathfrak{q}$ で $\bar{x}\bar{y}=\bar{0}$ なら $\bar{x}=\bar{0}$ または $\bar{y}$ は冪零.

よって,$\mathfrak{q}$ が準素イデアルであるための条件は,$A/\mathfrak{q}$ の零因子がすべて冪零であること.

 

 

準素イデアルの簡単な性質を見てみる.

 

・素イデアルは準素イデアルである.

(証明)それはそう. $■$

 

・準素イデアルの縮約はまた準素イデアルである.

(証明)$f:A\to B$ を環の準同型として $\mathfrak{q}$ を $B$ の準素イデアルとする.$xy\in f^{-1}(\mathfrak{q}),\ x\notin f^{-1}(\mathfrak{q})$ なる $x,y\in f^{-1}(\mathfrak{q})$ を任意にとる.このとき,$\mathfrak{q}$ は準素イデアルで $f(x)f(y)\in\mathfrak{q},\ f(x)\notin\mathfrak{q}$ だから,ある $n\in\mathbb{N}$ で $f(y)^{n}\in\mathfrak{q}$ となる.つまり $f(y^{n})=f(y)^{n}\in\mathfrak{q}$ となるので, $y\in\sqrt{f^{-1}(\mathfrak{q})}$ となる.$■$

 

・$A$ の準素イデアル $\mathfrak{q}$ に対して根基 $\sqrt{\mathfrak{q}}$ は, $\mathfrak{q}$ を含む最小の素イデアルである.

(証明)  $\sqrt{\mathfrak{q}}$ は $\mathfrak{q}$ を含むすべての素イデアルの共通部分なので, あとは $\sqrt{\mathfrak{q}}$ が素イデアルであることを示せばよい.

$xy\in\sqrt{\mathfrak{q}},\ x\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ なる$x,\ y\in A$を任意にとる. ある $n\in\mathbb{N}$ で $(xy)^{n}\in\mathfrak{q}$ となり, $A$ は可換環だから $x^{n}y^{n}\in\mathfrak{q}$ となる.$x\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ より $x^{n}\notin\mathfrak{q}$ で,$\mathfrak{q}$ は準素イデアルだから, $y^{n}\in\sqrt{\mathfrak{q}}$ となる.よって $y\in\sqrt{\mathfrak{q}}$ となる. $■$

※準素イデアル $\mathfrak{q}$ が $\mathfrak{p}=\sqrt{\mathfrak{q}}$ をみたすとき, $\mathfrak{q}$ は $\mathfrak{p}-$準素イデアルであるという.

 

・$\mathfrak{p}$ が $A$ の単項素イデアルで $\mathfrak{q}$ が $\mathfrak{p}-$準素イデアルのとき, ある$n\in\mathbb{N}$ で $\mathfrak{q}=\mathfrak{p}^{n}$ となる.

(証明) $\mathfrak{p}=(p)$ とする.$p\in\sqrt{\mathfrak{q}}$ だから, $p$ のある冪 $p^{n}$ が $\sqrt{\mathfrak{q}}$ に含まれる. そうなるような自然数のうち最小のものを $n$ とする.

この $n$ で明らかに $\mathfrak{p}^{n}\subseteq\mathfrak{q}$ となる.

逆に $\mathfrak{q}\subseteq\mathfrak{p}^{n}$ となることを背理法で示す.

$a\in\mathfrak{q},\ a\notin\mathfrak{p}^{n}$ なる $a\in A$ が存在すると仮定する. $a\in\sqrt{\mathfrak{q}}=(p)$ よりある $a_{1}\in A$ で $a=a_{1}p$ と書ける. $a_{1}\in(p)$ のときはまたある $a_{2}\in A$ で $a_{1}=a_{2}p$ と書ける. $a_{k}\in A$ まで定義されて $a_{k}\in(p)$ のときはある $a_{k+1}\in A$ で $a_{k}=a_{k+1}p$ と表せる.各 $k\in\mathbb{N}$ に対して $a=a_{k}p^{k}$ である. 今, $a\notin\mathfrak{p}^{n}$ だから, $n$回目まででこの操作は止まる. つまり, ある $m<n$ で $a_{m}\notin(p)$ となる. このとき, $a_{m}p^{m}=a\in\mathfrak{q},\ a_{m}\notin(p)=\sqrt{\mathfrak{q}}$ より $p^{m}\in\mathfrak{q}$ となるので, $n$ の最小性から $n\leq m $ となる. 以上より $m<n,\ n\leq m $ であるが, これは矛盾している. よって, $\mathfrak{q}\subseteq{p}^{n}$ となる. $■$

 

 

準素イデアルの例をいろいろ見ていこう.

 

$\mathbb{Z}$ の準素イデアルは $(0)$ と $(p^{n})$ だけである.ただし $p$ は素数で $n$ は自然数

(証明)$\mathbb{Z}$ の素イデアルは $(0)$ と $(p)$ だけだから,さっきの命題を適用すればいい. $■$

 

イデアル素数の一般化っぽいものであったが,準素イデアル素数の冪を一般化したものっぽいものであることが,この例から分かる.

 

$\sqrt{\mathfrak{q}}$ が単項イデアルのときは $\mathfrak{q}$ は $\sqrt{\mathfrak{q}}$ の冪となるが, そうでないときは $\mathfrak{q}$ は $\sqrt{\mathfrak{q}}$ の冪とはならないこともある.そのような反例が次である.

 

多項式環 $A:=k[x,\ y]$ で $\mathfrak{q}:=(x,\ y^{2})$ とする.

写像

$\varphi:k[y]\ni f\ \mapsto\  \bar{f}\in A/\mathfrak{q}$

全射で( $A$ において $x$ でくくれる項は $A/\mathfrak{q}$ で消えるから), 準同型である. 核は $\rm{ker}$$\varphi=(y^{2})$ なので, 準同型定理より $k[y^{2}]/(y^{2})\cong A/\mathfrak{q}$ となる.

$k[y]/(y^{2})$ の零因子 $\bar{f}$ を任意にとる. ある $\bar{g}\in k[y]/(y^{2}),\ \bar{g}\neq\bar{0}$ で $\bar{f}\bar{g}=\bar{0}$ となる. $\bar{f}$ の任意の代表元 $f$ について, $f$ の定数項は $0$ なので $f^{2}\in(y^{2})$ となる. よって, $\bar{f}^{2}=\bar{0}$ となり, $\bar{f}$ は冪零元である. したがって, $A$ で $\mathfrak{q}$ は準素イデアルである.

$\mathfrak{p}:=\sqrt{\mathfrak{q}}$ とすると

$\mathfrak{p}=\{\displaystyle{\sum_{i,\ j\ge 0}}a_{i,\ j}x^{i}y^{j}\in A\ |\ a_{0,\ 0}=0 \}=(x,\ y)$

である.

ところが,$\mathfrak{p}^{2}\subsetneq\mathfrak{q}\subsetneq{p}$ である.実際, $x+y^{2}\in\mathfrak{q}\backslash\mathfrak{p}^{2},\ x+y\in\mathfrak{p}\backslash\mathfrak{q}$ である. よって,$\mathfrak{q}$ は $\mathfrak{p}$ の冪とならない.

 

$\sqrt{\mathfrak{a}}$ が素イデアルであっても, $\mathfrak{a}$ が準素イデアルであるとは限らない.その反例が次の例である.

 

$A:=k[x,\ y,\ z]/(xy-z^{2}),\ \mathfrak{p}:=(\bar{x},\ \bar{z})$ を考える.

$\varphi :A\ni\overline{ \displaystyle{\sum_{i=0}^{n}}a_{i}y^{i} +  \displaystyle{\sum_{1\leq k,\ m<\infty \\ 0\leq l<\infty}} b_{k,\ l,\ m}x^{k}y^{l}z^{m} }\ \mapsto\ \displaystyle{\sum_{i=0}^{n}} a_{i}y^{i}\in k[y]$

とすると, この $\varphi$ は $\rm{well-def}.$ な全射準同型で, 核は $\rm{ker}$$\varphi=(\bar{x},\ \bar{z})$ である.よって, 準同型定理より $A/\mathfrak{p}\cong k[y]$ となる. $k[y]$ は整域だから, $\mathfrak{p}$ は $A$ の素イデアルである.

$\mathfrak{q}:=\mathfrak{p}^{2}$ とおくと, $\mathfrak{p}$ が素イデアルなので $\sqrt{\mathfrak{q}}=\mathfrak{p}$ となり, $\sqrt{\mathfrak{q}}$ は素イデアルである.

ところが, $\mathfrak{q}$ は準素イデアルではない. 実際, $\overline{xy-z^{2}}=\bar{0}$ より $\bar{x}\bar{y}=\bar{z}^{2}\in\mathfrak{q}$ だが $\bar{x}\notin\mathfrak{q},\ \bar{y}\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ である.

 

ところが, $\sqrt{\mathfrak{a}}$ が極大イデアルのときは $\mathfrak{a}$ は準素イデアルとなる.

(証明) $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ の元は何乗かすれば $\bar{0}$ になるし, 逆に, 何乗かして $\bar{0}$ になる元は $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ の元である. よって, $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ は $A/\mathfrak{a}$ の冪零元根基である.

$\sqrt{\mathfrak{a}}$ は $A$ で極大なので $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ は $A/\mathfrak{a}$ で極大である.よって $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ は $A/\mathfrak{a}$ の冪零元根基すなわちすべての素イデアルの共通集合であり,極大イデアルでもあるので, 唯一の素イデアルとなり. 従って唯一の極大イデアルとなる.ゆえに, $A/\mathfrak{a}$ の零因子 $\bar{x}$ をとると $\bar{x}$ は非単元ゆえ $\bar{x}\in\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ となり, $\bar{x}$ は冪零元となる.つまり $\mathfrak{a}$ は準素イデアルである. $■$

 

よって, 特に極大イデアル $\mathfrak{m}$ の冪は $\mathfrak{m}-$準素イデアルである.

 

 

さて, イデアルの準素分解というものを紹介する.

$\mathfrak{a}$ が有限個の準素イデアル $\mathfrak{q}_{i}$ たちで 

$\mathfrak{a}=\underset{i=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{i}$

と表せるとき, これは $\mathfrak{a}$ の準素イデアル分解であるという.

特に, 準素分解が次の(1), (2)をみたすとき, その分解は最短であるという.

 (1) どの $\mathfrak{q}_{i}$ も異なる.

 (2) どの $i$ についても $\mathfrak{q}_{i}\nsupseteq\underset{i\neq j}{\cap}\mathfrak{q}_{j}$.

 

じつは,任意に与えられた準素分解に対して, 最短の準素分解を作ることができる.

 

まず, (1) をみたすような分解が作れる. つまり, 各 $\mathfrak{q}_{j_{k}}$ が $\mathfrak{p}_{j}-$準素イデアルなら, $\mathfrak{q}_{j}:=\underset{k}{\cap}\mathfrak{q}_{j_{k}}$ も $\mathfrak{p}_{j}-$準素イデアルである.

(証明) $\sqrt{\mathfrak{q}_{j}}=\sqrt{\underset{k}{\cap}\mathfrak{q}_{j_{k}}}=\underset{k}{\cap}\sqrt{\mathfrak{q}_{j_{k}}}=\underset{k}{\cap}\mathfrak{p_{j}}=\mathfrak{p}_{j}$ なので, あとは $\mathfrak{q}_{j}$ が準素イデアルであることを示せばいい.

$xy\in\mathfrak{q}_{j},\ x\notin\mathfrak{q}_{j}$ なる $x,\ y\in A$ を任意にとる. すると, ある $k$ で $x\notin\mathfrak{q}_{j_{k}}$ より$y\in\sqrt{\mathfrak{q}_{j_{k}}}=\mathfrak{p}_{j}=\sqrt{\mathfrak{q}_{j}}$ となるので,  $\mathfrak{q}_{j}$ は準素イデアルである. $■$

 

また, 次の命題を使えば, (2) をみたすような分解も作れる.

$\mathfrak{q}_{i}$ が $\mathfrak{p}_{i}-$準素イデアルのとき,次が成り立つ.

 (1) $x\in\mathfrak{q}_{i}$ なら $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)=(1)$ である.

 (2) $x\notin\mathfrak{q}_{i}$ なら $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ は $\mathfrak{p}_{i}-$準素イデアルである.

 (3) $x\notin\mathfrak{p}_{i}$ なら $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)=\mathfrak{q}_{i}$ である.

(証明) (1) は当たり前.

(2) について, まず $\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}=\mathfrak{p}_{i}$ を示す.$a\in\sqrt{(\mathfrak{q}_{i})\ :\ x}$ を任意にとると, ある $n\in\mathbb{N}$ で $a^{n}x\in\mathfrak{q}_{i}$ となる. 今, $x\notin\mathfrak{q}_{i}$ なので $a^{n}\in\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ つまり $a\in\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}=\mathfrak{p}_{i}$ となるので, $\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}\subseteq\mathfrak{p}_{i}$ が言えた.逆に $\mathfrak{p}_{i}\subseteq\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}$ は明らかに成り立つ. よって $\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}=\mathfrak{p}_{i}$ である.

ゆえに, あとは $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ が準素イデアルであることを言えばいい. $ab\in(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x),\ a\notin\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}=\mathfrak{p}_{i}=\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ なる $a,\ b\in A$ を任意にとる. $abx\in\mathfrak{q}_{i}$ で $a\notin\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ だから, $bx\in\mathfrak{q}_{i}$ である. つまり $b\in(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ となるので, $(\mathfrak{q}_{i})\ :\ x$ は準素イデアルである.

(3) は, $\mathfrak{q}_{i}\subseteq(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ は当たり前で,逆も少し考えたらわかる. $■$ 

 

準素イデアル分解の例をみてみる.

 

$A:=k[x,\ y]$ で $\mathfrak{a}:=(x^{2},\ xy)$ とする. $xy\in\mathfrak{a}$ だけど $x\notin\mathfrak{a},\ y\notin\mathfrak{a}$ なので, $\mathfrak{a}$ 自身は準素イデアルではない.

$\mathfrak{q}_{1}:=(x),\ \mathfrak{q}_{2}:=(x,\ y)^{2}$ とおくと, $\mathfrak{q}_{1}$ は素イデアルゆえ準素イデアルだし, $(x,\ y)$ は極大イデアルなので $\mathfrak{q}_{2}$ は準素イデアルである. よって $\mathfrak{a}=\mathfrak{q}_{1}\cap\mathfrak{q}_{2}$ は準素分解であり, これは最短である.

また, $\mathfrak{q}_{3}:=(x^{2},\ y)$ とおくと $\mathfrak{a}=\mathfrak{q}_{1}\cap\mathfrak{q}_{3}$ も最短な準素分解となっている.

 

この例から分かるように,準素分解可能な与えられたイデアルに対して, その準素分解の仕方は一意ではない.

しかし, $\mathfrak{p}_{i}$ たちからなる集合は $\mathfrak{a}$ に対して一意であったり, $\mathfrak{p}_{i}$ たちの一部からなる孤立集合と呼ばれるものに対して対応する $\mathfrak{q}_{i}$ たちの共通部分は $\mathfrak{a}$ に対して一意であったりと, ある意味での一意性は成り立つ. (書くのが面倒になってきたし本を読んだら分かるので省略.)

 

 

最短の準素分解 $\mathfrak{a}=\underset{i=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{i},\ \mathfrak{p}_{i}:=\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ に対して次が成り立つ.

$\underset{i=1}{\overset{n}{\cup}}\mathfrak{p}_{i}=\{x\in A\ |\ (\mathfrak{a}\ :\ x)\neq\mathfrak{a}\}$.

(証明) $x\in\underset{i}{\cup}\mathfrak{p}_{i}$ を任意にとると, ある $i$ で $x\in\mathfrak{p}_{i}=\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ なので, $x$ のある冪 $x^{n}$ で$x^{n}\in\mathfrak{q}_{i}$ となる. そのような自然数のうち最小のものを $n$ とする. また, $i$ に対して準素分解の最短性から $y\in\underset{j\neq i}{\cap}\mathfrak{q}_{j},\ y\notin\mathfrak{q}_{i}$ がとれる. この $n$ と $y$ に対して, $(x^{n-1}y)x=x^{n}y\in\underset{k=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{k}=\mathfrak{a}$ より $x^{n-1}y\in(\mathfrak{a}\ :\ x)$ だが, $x^{n-1}y\notin\mathfrak{q}_{i}$ より $x^{n-1}y\notin\mathfrak{a}$ となる. つまり $(\mathfrak{a}\ :\ x)\nsubseteq\mathfrak{a}$ となる.

逆に, $(\mathfrak{a}\ :\ x)\nsubseteq\mathfrak{a}$ なる $x\in A$ を任意にとると, $y\notin\mathfrak{a}$ つまり $\exists i,y\in\mathfrak{q}_{i}$ なる $y\in(\mathfrak{a}\ :\ x)$ がとれる. このとき $xy\in\mathfrak{a}=\underset{k=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{k}$ より $xy\in\mathfrak{q}_{i}$ となるので, $x\in\mathfrak{p}_{i}$ となる. $■$

 

特に,一般の環 $A$ で

 $x$ が $A$ の零因子である.

  $\Longleftrightarrow$  ある $y\neq 0$ で $xy=0$ となる.

  $\Longleftrightarrow$  ある $y\neq0$ で $y\notin(0\ :\ x)$となる.

  $\Longleftrightarrow$  $(0\ :\ x)\nsubseteq 0$である.

が成り立つので, $0$ が準素分解可能で $0=\underset{i}{\cap}\mathfrak{q}_{i}$ のとき $A$ の零因子の集合 $D$ は $D=\underset{i}{\cup}\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ となる.

 

 

与えられたイデアルに対して, 準素分解がいつでも可能であるとは限らない. (準素分解できないイデアルの例はよく分からないけど・・・)

しかし, ネーター環においてはイデアルは常に準素分解できるので, 最後にそれを示す.

 

その準備として,  既約イデアルというものを導入しておく.

イデアル $\mathfrak{a}$ について次が成り立つとき, $\mathfrak{a}$ は既約イデアルであるという.

$\mathfrak{a}=\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ なら $\mathfrak{a}=\mathfrak{b}$ または $\mathfrak{a}=\mathfrak{c}$となる.

 

ネーター環の既約イデアルは,準素イデアルである.

(証明) 背理法で示す.

$A$ をネーター環として, 準素でない既約イデアル $\mathfrak{q}$ が存在すると仮定する. すると, $xy\in\mathfrak{q},\ x\notin\mathfrak{q}, y\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ なる $x,\ y\in A$ がとれる.

この $y$ に対して, イデアルの列 $\mathfrak{a}_{n}:=(\mathfrak{q}\ :\ y^{n})$ を考える.( $y^{0}=1$ とする.) $A$ のネーター性から列 $\mathfrak{a}_{0}\subseteq\mathfrak{a}_{1}\subseteq...$ は途中のある $n$ で止まる.

この $x,\ y,\ n$ に対して $\mathfrak{b}:=\mathfrak{q}+(x), \mathfrak{q}+(y^{n})$ とおくと, $\mathfrak{q}=\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ となることが次のように分かる. $\mathfrak{q}\subseteq\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ は明らかである. 逆に $z\in\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ を任意にとると, ある $p,q\in\mathfrak{q},\ a,b\in A$ で $z=p+ax=q+by^{n}$ と表せて, このとき $by^{n+1}=py+axy-qy\in\mathfrak{q}$ となるので $b\in\mathfrak{a}_{n+1}=\mathfrak{a}_{n}$ となる. よって $z=q+by^{n}\in\mathfrak{q}$ つまり $\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}\subseteq\mathfrak{q}$ となる.

ところで, $x\in\mathfrak{b},\ x\notin\mathfrak{q}$ より $\mathfrak{q}\neq\mathfrak{b}$ だし, $y^{n}\in\mathfrak{c},\ y^{n}\notin\mathfrak{q}$ より $\mathfrak{q}\neq\mathfrak{c}$ である.

これらは, $\mathfrak{q}$ が既約であることに反する. よって, $A$ の既約イデアルは必ず準素イデアルである. $■$

 

また,ネーター環において,任意のイデアルは既約イデアル分解ができる.

(証明) 背理法で示す.

ネーター環 $A$ のイデアルで既約分解できないものたちの集合を $\mathbb{X}$ として, $\mathbb{X}\neq\emptyset$ と仮定する.

$A$ のネーター性から $\mathbb{X}$ は極大元をもつので, そのひとつを $\mathfrak{a}$ とする. すると, $\mathfrak{a}$ 自身は既約でないので, ある $\mathfrak{b}\supsetneq\mathfrak{a},\ \mathfrak{c}\supsetneq\mathfrak{a}$ で $\mathfrak{a}=\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ と表せる. $\mathfrak{a}$ の極大性より $\mathfrak{b},\ \mathfrak{c}\notin\mathbb{X}$ なので, $\mathfrak{b},\ \mathfrak{c}$ は既約分解できる. つまり, ある既約イデアルたち $\mathfrak{q}_{i}$ で $\mathfrak{b}=\underset{i=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{i},\ \mathfrak{c}=\underset{i=n+1}{\overset{m}{\cap}}\mathfrak{q}_{i}$ と表せる. したがって $\mathfrak{a}=\underset{i=1}{\overset{m}{\cap}}\mathfrak{q}_{i}$ となるが, これは $\mathfrak{a}\in\mathbb{X}$ に矛盾する.

よって $\mathbb{X}=\emptyset$ となる. つまり ネーター環の任意のイデアルは既約分解できる. $■$

 

以上から, ネーター環イデアルはすべて準素分解可能であることが分かった.

わーい!

 

おしまい. 

 

 

参考文献

M. F.Atiyah, I. G. MacDonald著. 新妻弘訳. 可換代数入門. 共立出版, 2006.