ぱいおつ日記

ぱいおつは終わりました。

級数の足す順番の話

こんにちは,ぱいです.

ツイッターのアカウントが凍結されちゃったけど,小さなアカウントに移行して細々と生きています.

ブログ更新しよう更新しようと思いながらダラダラしてて,ひさしぶりの更新になっちゃいました.

 

このあいだゼミの途中で世間話してて,級数の足す順番を変える話になりました.

絶対収束する級数は足す順番を変えても同じ値に収束することが知られているけど,条件収束のときはどうなるのかという話でした.

面白いと思ったので,忘れないうちにまとめておこうと思ってブログに書きます.

 

 

まずは,言葉の定義をしておきます.

この記事では,数列というと,実数の数列のことをいうことにします.

数列 ${a_{n}}$ の和が絶対収束するとは,$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}|a_{n}|$ が収束することをいいます.

${a_{n}}$ の和が条件収束するとは,$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_{n}$ は収束するが $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}|a_{n}|$ は収束しないことをいいます.

 

 

たとえば,$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\left(-\frac{1}{2} \right)^{n}$ は絶対収束します.

 

条件収束する級数の有名な例は,$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n}}{n+1}$ です.

$x \neq -1$ に対して\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{n=0}^{N}(-x)^{n}=\frac{1-(-x)^{N}}{1+x}\end{eqnarray}より\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{1}{1+x}-\sum_{n=0}^{N}(-x)^{n}=\frac{(-x)^{N}}{1+x}\end{eqnarray}なので,両辺を $0\leq x\leq1$ で積分して\begin{eqnarray}\displaystyle\log 2-\sum_{n=0}{N}\frac{(-1)^{n}}{n+1}=\int_{0}^{1}\frac{(-x)^{N}}{1+x}dx\end{eqnarray}となります.よって\begin{eqnarray}\displaystyle\left|\log2-\sum_{n=0}^{N}\frac{(-1)^{n}}{n+1} \right|&=&\left|\int_{0}^{1}\frac{(-x)^{N}}{1+x} \right|\\&\leq&\int_{0}^{1}x^{N}dx\\& \to&0\hspace{15pt}(N \to\infty)\end{eqnarray}となり,$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n}}{n+1}$ は $\log 2$ に収束します.

ところが,$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$ は発散します.

実際,もしこれがある有限の値 $S$ に収束すると仮定すると\begin{eqnarray}\displaystyle S&=&\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}\\&=&\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2n}+\frac{1}{2n} \right)\\&<&\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2n-1}+\frac{1}{2n} \right)\\&=&S\end{eqnarray} となり矛盾します.

 

 

級数が絶対収束してくれると,いろいろ嬉しいことがあります.

 

まず,絶対収束する級数は収束します.

これは,\begin{eqnarray}\displaystyle|\sum a_{n}|\leq\sum|a_{n}|\end{eqnarray}より分かります.

 

また,$\displaystyle\sum a_{n}$ が絶対収束するとき,${a_{n}}$ を並べ替えて得られる任意の数列 ${b_{n}}$ に対して次のように\begin{eqnarray}\sum b_{n}=\sum a_{n}\end{eqnarray}が分かります.

\[a^{+}_{n}:=\left\{\begin{array}{11}a_{n}&(a_{n}>0)\\0&(a_{n}\leq0)\end{array} \right.\]

\[a^{-}_{n}:=\left\{\begin{array}{11}0&(a_{n}\geq0)\\a_{n}&(a_{n}<0)\end{array} \right.\]

に対して $\displaystyle A^{+}_{N}:=\sum_{n=0}^{N} a^{+}_{n}, A^{-}_{N}:=\sum_{n=0}^{N}a^{-}_{n}$ とおくと,これらはそれぞれある $A^{+}, A^{-}$ に収束し,\begin{eqnarray}\sum a_{n}=A^{+}+A^{-}\end{eqnarray}となります. 

$b^{\pm}_{n}, B^{\pm}_{N}, B^{\pm}$ も同様に定義すると,\begin{eqnarray}\sum b_{n}=B^{+}+B^{-}\end{eqnarray}となります.

$A^{+}_{L}$ に対して $M, N$ を十分大きく取れば\begin{eqnarray}A^{+}_{L}\leq B^{+}_{M}\leq A^{+}_{N}\end{eqnarray}となるので,はさみうちの原理より $B^{+}=A^{+}$ となります.同様に $B^{-}=A^{-}$ です.

よって $\sum b_{n}=\sum a_{n}$ となります.

 

 

このように,絶対収束する級数は足す順番を入れ替えても同じ値に収束してくれるので非常に気持ちよく扱うことができます.

ところが,条件収束だとそうは行きません.

実は,条件収束する級数は,足す順番を入れ替えることで任意の値に収束させることができます.

 

${a_{n}}$ に対して $\sum a_{n}$ が条件収束するとします.

実数 $\alpha$ を任意にとり,和が $\alpha$ に収束するように ${a_{n}}$ を並べ替えてみせます.

 

$\sum a_{n}$ が条件収束するという仮定から,$\sum a^{+}_{n},\ \sum a^{-}_{n}$ は共に発散することが分かります.

そこで,自然数 $N_{k},\ M_{k}\ (k=0, 1, 2, \cdots)$ を次のように定めます.

まず, $\displaystyle\sum_{n=0}^{N}a^{+}_{n}>\alpha$ なる最小の $N$ をとり,それを $N_{0}$ とします.

そして,$\displaystyle\sum_{n=0}^{N_{0}}a^{+}_{n}+\sum_{m=0}^{M}a^{-}_{m}<\alpha$ なる最小の $M $ をとり,それを $M_{0}$ とします.

$N_{k}, M_{k}$ まで定義されているとき,$\displaystyle\left(\sum_{n=0}^{N_{k}}a^{+}_{n}+\sum_{m=0}^{M_{k}}a^{-}_{m} \right)+\sum_{n=N_{k}+1}^{N}a^{+}_{n}>\alpha$ なる最小の $N$ をとり,それを $N_{k+1}$ とします.

そして,$\displaystyle\left(\sum_{n=0}^{N_{k}}a^{+}_{n}+\sum_{m=0}^{M_{k}}a^{-}_{m} \right)+\sum_{n=N_{k}+1}^{N_{k+1}}a^{+}_{n}+\sum_{m=M_{k}+1}^{M}a^{-}_{m}<\alpha$ なる最小の $M $ をとり,それを $M_{k+1}$ とします. 

 

こうして作った ${N_{k}}, {M_{k}}$ に対して,${a_{n}}$ を\begin{eqnarray}a^{+}_{0},\ a^{+}_{1},\ \cdots,\ a^{+}_{N_{0}},\ a^{-}_{0},\ a^{-}_{1},\ \cdots,\ a^{-}_{M_{0}},\ a^{+}_{N_{0}+1},\ a^{+}_{N_{0}+2},\ \cdots,\ a^{+}_{N_{1}},\ a^{-}_{M_{0}+1},\ a^{-}_{M_{0}+2},\ \cdots,\ a^{-}_{M_{1}},\ \cdots\end{eqnarray}と並べ替えます.

こうして並べ替えた数列の和は,数直線上で $\alpha$ のまわりを行ったり来たりします.

しかも,$\sum a_{n}$ が収束することから $a_{n}$ は $0$ に収束するので,$\alpha$ をまたぐ度に振れ幅は $0$ に近づいていきます.

つまり,この並び替えた数列の和は $\alpha$ に収束します.

 

 

このように,絶対収束しない級数は足す順番を変えると極限が変わってしまう場合があるので,級数の足す順番を好きに変えるときは絶対収束してるかどうか丁寧に確認しないといけないんですね.

 

おしまい.