ぱいおつ日記

ぱいおつは終わりました。

ベクトル空間とか環上の自由加群とかの基底の元の個数の話

ぱいですこんにちは.

 

 

基底の個数の話を知って面白いと思ったので書きます.

その前にいろいろ言葉の定義をおさらいしておこうと思います.

 

 

足し算や引き算ぽいことができる空間を群と呼んで,しかも演算が可換なら特にアーベル群と呼んだりします.

アーベル群でしかも掛け算ができて分配法則の成り立つ空間を環と呼びます.

掛け算の可換な環を可換環といいます.

環で割り算もできる空間を体と呼びます.

 

アーベル群$M $に対して環$R$の元によるスカラー倍の作用が定義されていて任意の$\lambda,\mu\in R,x,y\in M $で次が成り立つとき,$M $を左$R-$加群といいます;

・$\lambda(x+y)=\lambda x+\lambda y$

・$(\lambda+\mu)x=\lambda x+\mu x$

・$\lambda(\mu x)=(\lambda\mu)x$

・$1_{R}x=x$

特に体上の加群をベクトル空間といったりします.

たとえば環$R$自身は左$R-$加群とみなせます.

環の直積とかも加群とみなせます.

 

左$R$加群$M,N$に対して写像$M\rightarrow N$が和とスカラー倍を保つとき,この写像を$R$準同型と呼びます.

全単射な$R$準同型写像を$R$同型写像と呼び,そのような写像が存在するとき$M $と$N$は$R$同型であるといいます.

これは,「和やスカラー倍の構造が同じような空間」みたいなもんです.

同型という関係は,加群同士の同値関係となります.

 

 

左$R$加群$M $の部分集合$B$について,どの有限個の$x_{1},x_{2},...,x_{n}\in B$に対しても$\lambda_{1}x_{1}+\lambda_{2}x_{2}+...+\lambda_{n}x_{n}=0\Rightarrow\lambda_{1}=\lambda_{2}=...\lambda_{n}=0(\lambda_{1},...\lambda_{n}\in R)$が成り立つとき,$B$は$R$上で一次独立であるといいます.

$B$が一次独立で$M $のどの元も$B$の元のスカラー倍の和で一意的な表し方で書けるとき,$B$を$M $の$R$上の基底と呼びます.

 

ベクトル空間は必ず基底を持つことが知られてます.

実際,ベクトル空間$V$の一次独立な集合全体を$\mathscr{B}$とするとTukeyの補題から$\mathscr{B}$は極大元$B$を持ちますがこれが$V$の基底となります.

しかも,基底をどんなふうにとってもその元の個数は必ず一定であることもよく知られています.

 

環上の加群は一般には基底を持つとは限らないです.

たとえば$\mathbb{Q}$は$\mathbb{Z}$上の加群ですが基底を持ちません.

実際,$\mathbb{Q}$が基底$\{q_{1},...,q{n}\}$を持つと仮定すると,$q:=\frac{1}{2}q_{1}+...+\frac{1}{2}q_{n}$に対してある$a_{i}\in\mathbb{Z}$たちで$q=a_{1}q_{1}+...+a_{n}q_{n}$と表せて表示の一意性から$a_{i}=\frac{1}{2}$となりますが,これは$a_{i}\in\mathbb{Z}$に反します.

 

 

環上の加群で基底を持つようなものを,自由加群といいます.

 

可換環上の自由加群については,基底をどんなふうに取っても基底の元の個数は一定であることが知られています.

でも,非可換環上の自由加群については,基底の取り方によって基底の元の個数が変わってしまうことがあるので,それについて書いて終わります.

 

 

体$\mathbb{k}$上のベクトル空間$\displaystyle V:=\prod_{i=0}^{\infty}\mathbb{k}$に対して,線形写像$V\rightarrow V$全体の集合を$R$とします.

$R$は,普通の和と写像の合成で非可換環となります.

 

線形写像$V×V\rightarrow V$の全体を$S$とすると,これは普通の和と写像の合成によるスカラー倍で左$R$加群となります.

 

$V$は無限次元だから同型写像$\varphi:V×V\rightarrow V$が取れて,これによって$R\ni\lambda\rightarrow\lambda\circ\varphi\in S$は$R$同型写像となります.

つまり$R$と$S$は$R$同型です.

 

各$f\in S$に対して$p_{f},q_{f}:V\rightarrow V$を$p_{f}(x)=f(x,0),q_{f}=f(0,x)$と定めると,写像$S\ni f\rightarrow (p_{f},q_{f})\in R×R$は$R$同型写像となります.

つまり$S$と$R×R$は$R$同型です.

 

以上から$R$と$R×R$は$R$同型です.

$\psi:R×R\rightarrow R$を$R$同型写像とすると,$R×R$の$R$上の基底は$\{(1_{R},0_{R}),(0_{R},1_{R})\}$とも取れるし${\psi(1_{R})}$とも取れて,基底の濃度が一意に定まらない例となっています.

 

 

なんか勢いでわーって書いて割りと適当なので割りと適当ですけど書きたいことは取り敢えず書けたと思うのでおしまいにします.

ごはん食べてきますさよなら~~

 

 

参考文献

桂利行,代数学<2>環上の加群東京大学出版会,2007