ぱいおつ日記

ぱいおつは終わりました。

Z/nZの単元群の構造の話

こんにちは,ぱいです.

月に1回ぐらいはブログ更新したいなーと思っていて,前に記事を書いてから1か月ぐらい経ちました.

最近ゼミで $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$ の群構造の勉強をしたので,そのことを書いていきます.

 

 

$n=p_{1}^{a_{1}}p_{2}^{a_{2}}\dots p_{t}^{a_{t}}$ と因数分解されているとき中国剰余定理により

\begin{eqnarray}\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\cong(\mathbb{Z}/p_{1}^{a_{1}}\mathbb{Z})\times(\mathbb{Z}/p_{2}^{a_{2}}\mathbb{Z})\times\dots\times(\mathbb{Z}/p_{t}^{a_{t}}\mathbb{Z})\end{eqnarray}

という環の同型があるので,単元群について次のような同型が成り立ちます;

\begin{eqnarray}(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}\cong(\mathbb{Z}/p_{1}^{a_{1}}\mathbb{Z})^{\times}\times(\mathbb{Z}/p_{2}^{a_{2}}\mathbb{Z})^{\times}\times\dots\times(\mathbb{Z}/p_{t}^{a_{t}}\mathbb{Z})^{\times}\end{eqnarray}

よって,$(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$ の群構造を考えるには,素数 $p$ で $(\mathbb{Z}/p^{a}\mathbb{Z})^{\times}$ の構造を調べれば十分です. 

 

 

まずは,シンプルな $(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}$ を考えてみましょう.

そのために,いくつか準備をしておきます.

 

命題1.(フェルマーの小定理)  $p\nmid a$ なら $a^{p-1}\equiv1\bmod p$ が成り立つ.

(証明)

$a$ に関する帰納法で $a^{p}\equiv a\bmod p$ が示せる.$■$

 

命題2.$k$ が体で $f(x)\in k[x]$ の次数が $n$ なら,$f$ の $A$ における根は高々 $n$ 個しかない.

(証明)

$n$ に関する帰納法で,因数定理を用いて示せる.$■$

 

系3.$d\mid p-1$ なら $x^{d}\equiv1\bmod p$ は丁度 $d$ 個の解を持つ.

(証明)

命題2より,$x^{d}-1\equiv0$ は高々 $d$ 個の解をもつ.

そこで,$x^{d}-1\equiv0$ の解が $d$ 個よりも少ないと仮定する.

さて,$p-1=de$ とおくと

\begin{eqnarray}x^{p-1}-1&=&(x^{d})^{e}-1\\&=&(x^{d}-1) ( (x^{d})^{e-1}+(x^{d})^{e-2}+\dots+x^{d}+1)\end{eqnarray}

なので,この根の個数は $d+d(e-1)$ 個よりも少ない.つまり $p-2$ 個以下のはずである.

ところが,フェルマーの小定理より $x^{p-1}-1$ は $1,2,\dots,p-1$ の $p-1$ 個の根をもつ.

これは矛盾しているので,$x^{d}-1$ の根は丁度 $d$ 個である.$■$

 

定理4. $p$ が素数なら $(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}$ は巡回群となる.

(証明)

$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}$ の位数は $p-1$ なので,位数 $p-1$ の元の存在を示せばいい.

$p-1=q_{1}^{a_{1}}q_{2}^{a_{2}}\dots q_{t}^{a_{t}}$ と因数分解しておき,各 $i$ について次の2つの方程式を考える;

\begin{eqnarray}x^{q_{i}^{a_{i}-1}}&\equiv&0\bmod p\hspace{15pt}(1)\\ x^{q_{i}^{a_{i}}}&\equiv&0\bmod p\hspace{15pt}(2)\end{eqnarray}

系3から,(2)の方が(1)よりもたくさんの解をもつ.

そこで各 $i$ について,(1)をみたさないが(2)をみたすようなものを $g_{i}$ とおく.

すると,各 $i$ で $g_{i}$ の$\bmod p$ での位数は $q_{i}^{a_{i}}$ である.

実際,$g_{i}$ は(2)の解だから位数は $q_{i}^{b_{i}}\ (b\leq a_{i})$ という形をしているが,もし $b_{i}\lneq a_{i}$と仮定すると

\begin{eqnarray}g_{i}^{q_{i}^{a_{i}-1}}&=&(g_{i}^{q_{i}^{b_{i}}})^{q_{i}^{a_{i}-1-b}}\\&\equiv&1\hspace{30pt}\bmod p\end{eqnarray}

となり,これは $g_{i}$ が(1)をみたさないことに矛盾する.

よって $b_{i}=a_{i}$ である.

さて,$g:=g_{1}g_{2}\dots g_{t}$ とおく.

すると,$g$ の位数が $p-1$ であることが次のようにしてわかる.

まず,各 $i$ で $q_{i}^{a_{i}}\mid p-1$ より $g_{i}^{p-1}\equiv 1$ なので $g^{p-}$ となる.

よって,$g$ の位数を $n$ とおくと $n$ は $p-1$ の倍数で,$n=q_{1}^{c_{1}}q_{2}^{c_{2}}\dots q_{t}^{c_{t}}\ (c_{i}\leq a_{i})$ という形をしている.

ある $k$ で $c_{k}\lneq a_{k}$ となると仮定し,$m:=q_{1}^{a_{1}}q_{2}^{a_{2}}\dots q_{k}^{c_{k}}\dots q_{t}^{a_{t}}$ とおく.($q_{k}$ の肩だけ $c$ で,他の肩は $a$)

すると,$i\neq k$ で $q_{i}^{a_{i}}\mid m $ で $i=k$ で $q_{k}^{a_{k}}\not\mid m $ なので

\begin{eqnarray}g^{m}&\equiv&g_{k}^{m}\\&\not\equiv&1\bmod p\end{eqnarray}

である.

ところが $m $ は $n$ の倍数なので $g^{m}\equiv 1\bmod p$ であり,これは矛盾している.

したがってすべての $i$ で $c_{i}=a_{i}$ で,$n=p-1$ となる.

つまり,この $g$ が $(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})$ の生成元である. $■$

 

定義5. $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$ が巡回群のとき,その生成元を$\bmod p$ に対する原始根と呼ぶ.

 

定理4は,$p$ が素数なら$\bmod p$ に対する原始根が存在するということを言っていたのでした.

 

 

それでは, $(\mathbb{Z}/p^{l}\mathbb{Z})^{\times}$ を見ていきましょう.

そのために,いくつかの補題を用意しておきます.

 

補題6. $a\equiv b\bmod p^{l}$ なら $a^{p}\equiv b^{p}\bmod p^{l+1}$ となる.$(l\geq1)$

(証明)

$a\equiv b\bmod p^{l}$ のとき,ある $c\in\mathbb{Z}$ で $a=b+cp^{l}$ と表せるので,

\begin{eqnarray}\displaystyle a^{p}&=&(b+cp^{l})^{p}\\&=&b^{p} + pb^{p-1}cp^{l+1} + \sum_{k=2}^{p} {}_{p}\mathrm{C}_{k} b^{p-k}c^{k}p^{kl}\\&\equiv&b^{p}\bmod p^{l+1}\end{eqnarray} 

となる. $■$

 

系7. $l\geq 2$,$p\neq 2$ のとき,$ (1+ap)^{p^{l-2}}\equiv 1+ap^{l-  1}\bmod p^{l}$ となる.$(\forall a\in\mathbb{Z})$

(証明)

$l$ の帰納法で示す.

$l=2$ のときはオッケー.

$l$ で主張が正しいと仮定すると,この仮定に補題6を用いて

\begin{eqnarray}( (1+ap)^{p^{l-2}})^p\equiv (1+ap^{l -  1})^{p}\bmod p^{l}\end{eqnarray}

つまり

\begin{eqnarray}\displaystyle (1+ap)^{p^{l-  1}}&\equiv&1+pap^{l-  1}+ \sum_{k=2}^{p-1}{}_{p}\mathrm{C}_{k}a^{k}p^{k(l-  1)} + a^{p}p^{p(l-  1)}\\&\equiv&1+ap^{l}\bmod p^{l+1}\end{eqnarray} 

を得る. $■$

 

系8. $l\geq 2$,$p\neq 2$ で $p\not\mid a$ のとき,$1+ap$ の$\bmod p^{l}$ での位数は $p^{l-  1}$ である.

(証明)

$l+1$ で系7を用い,$(1+ap)^{p^{l-  1}}\equiv 1\bmod p^{l}$ がわかる.

また,系7より $(1+ap)^{p^{l-2}}\not\equiv 1\bmod p^{l}$ である.

よって,定理4の証明のときと同じような方法で $1+ap$ の$\bmod p^{l}$ での位数は $p^{l-  1}$ と分かる. $■$

 

さて,この補題を使って $(\mathbb{Z}/p^{l}\mathbb{Z})^{\times}$ の構造を調べていくのですが,$p=2$ のとき例えば $l=3,\ a=3$ とかでこの補題は成立しません.

だから,$p$ が奇素数のときと $p=2$ のときとで分けて考えていきます.

 

定理9. $p$ が奇素数のとき,$(\mathbb{Z}/p^{l}\mathbb{Z})^{\times}$ は巡回群である.

(証明)

まず,$\bmod p$ の原始根 $g$ で $g^{p-1}\not\equiv 1\bmod p^{2}$ となるものがとれることを示す.

定理4より$\mod p$ の原始根 $g$ はとれる.

この $g$ で $g^{p-1}\equiv 1\bmod p^{2}$ となるときは,代わりに $g+p$ をとればいい.

実際,このとき $g+p$ も$\bmod p$ の原始根だし,

\begin{eqnarray}\displaystyle (g+p)^{p1}&=&g^{p-1} + (p-1)g^{p-2}p + \sum_{k=2}^{p-1}{}_{p-1}\mathrm{C}_{k}g^{p-1-k}p^{k}\\&\equiv&1+(p-1)g^{p-2}p\bmod p^{2}\\ &\not\equiv& 1\bmod p^{2}\end{eqnarray}

である.

よって,$g^{p-1}\not\equiv 1\bmod p^{2}$ なる$\bmod p$ の原始根 $g$ がとれる.

さて,この $g$ が$\bmod p^{l}$ の原始根となることを示す.

今 $(\mathbb{Z}/p^{l}\mathbb{Z})$ の位数はオイラー関数を用いて $\phi(p^{l})=p^{l-  1}(p-1)$ なので,

\begin{eqnarray} g^{n}\equiv 1\bmod p^{l}\Rightarrow p^{l-  1}(p-1)\mid n\end{eqnarray}

を示せばよい.

さて,$g^{n}\equiv 1\bmod p^{l}$ のとき $g^{n}\equiv 1\bmod p$ で,$g$ は$\bmod p$ で位数 $p-1$ だから,$p-1\mid n$ を得る.

また,$g$ の選び方から,$g^{p-1}$ は $p$ と互いに素なある $a\in\mathbb{Z}$ を用いて $g^{p-1}=1+ap$ と表せる.

このとき

\begin{eqnarray}(1+ap)^{n}&=&(g^{p-1})^{n}\\&=&(g^{n})^{p-1}\\&\equiv&1\bmod p^{l}\end{eqnarray}

で,系8より $1+ap$ の$\bmod p^{l}$ での位数は $p^{l-  1}$ なので,$p^{l-  1}\mid n$ を得る.

今,$p-1$ と $p^{l-  1}$ は互いに素だから,以上から $p^{l-  1}(p-1)\mid n$ となる. $■$

 

 

さて,$\bmod n$ の原始根は必ずしも存在するとは限りません.

例えば, $(\mathbb{Z}/8\mathbb{Z})^{\times}=\{1,3,5,7\}$ は位数 $4$ の元を持たず巡回群でないので,$\bmod 8$ の原始根は存在しません.

$(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^{\times}=\{1\}$ と $(\mathbb{Z}/4\mathbb{Z})^{\times}=\{1,3\}$ は巡回群ですが,$l\geq 3$ に対して $(\mathbb{Z}/2^{l}\mathbb{Z})^{\times}$ は違った構造になっています.

 

補題10. $l\geq 3$ に対して,$5$ の$\bmod 2^{l}$ での位数は $2^{l-2}$ である.

(証明)

まず,$5^{2^{l-3}}\equiv 1+2^{l-  1}\bmod 2^{l}$ を $l$の帰納法で示しておく.

$l=3$ のときは明らかにオッケー.

$l$ で主張が正しいと仮定すると,この仮定に補題6を用いて

\begin{eqnarray}(5^{2^{l-3}})^{2}\equiv (1+2^{l-  1})^{2} \bmod 2^{l+1}\end{eqnarray}

つまり

\begin{eqnarray}5^{2^{l-2}}&\equiv&1+2^{l}+2^{2(l-  1)}\\&\equiv&1+2^{l}\bmod 2^{l}\end{eqnarray}

である.従って,すべての $l\geq 3$で

\begin{eqnarray}5^{2^{l-3}}&\equiv&1+2^{l-  1}\bmod 2^{l}\\&\not\equiv&1\bmod2^{l}\end{eqnarray}

である.また,$5^{2^{l-2}}\equiv 1+2^{l}\bmod 2^{l+1}$ より $5^{2^{l-2}}\equiv 1\bmod 2^{l}$ である.

よって,定理4の証明のときと同じ方法で,$5$ の$\bmod 2^{l}$ での位数は $2^{l-2}$ とわかる. $■$

 

定理11. $l\geq 3$ に対して $(\mathbb{Z}/2^{l}\mathbb{Z})^{\times}$ は$C_{2}\times C_{2^{l-2}}$ と同型.ただし $C_{r}$ は位数 $r$ の巡回群

(証明)

 $G:=\left\{\overline{(-1)^{a}5^{b}}\mid a=0,1,\ 0\leq b<2^{l-2}\right\}$ とおく.ただし $\overline{x}$ は $x$ の$\bmod 2^{l}$ での剰余類とする.

まず,$\overline{(-1)^{a}5^{b}}$ たちがそれぞれ異なることを示す.

$(-1)^{a}5^{b}\equiv (-1)^{c}5^{d}\bmod 2^{l}$ のとき,$5\equiv 1\bmod 4$ より $(-1)^{a}1^{b}\equiv(-1)^{c}1^{d}\bmod 4$ つまり $(-1)^{a}\equiv(-1)^{c}\bmod 4$ となる.

よって $a=c$ となる.

このとき $5^{b}\equiv 5^{d}\bmod 2^{l}$ より $5^{b-d}\equiv 1\bmod 2^{l}$ である.

よって補題10より $b-d$ は $2^{l-2}$ の倍数なので,$0\leq b,d<2^{l-2}$ より $b=d$ となる.

従って $G$ の元の個数は $2^{l-  1}=\phi(2^{l})$ なので,$(\mathbb{Z}/2^{l}\mathbb{Z})=G$ となる.

よって $(\mathbb{Z}/2^{l}\mathbb{Z})\cong C_{2}\times C_{2^{l-2}}$ である. $■$

 

 

以上をまとめると,$(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$ の構造は次のようになります.

 

定理12.$n=2^{a}p_{1}^{a_{1}}p_{2}^{a_{2}}\dots p_{t}^{a_{t}}$ と因数分解されているとき,

\begin{eqnarray}(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})\cong (\mathbb{Z}/2^{a}\mathbb{Z})^{\times}\times C_{\phi(p_{1}^{a_{1}})}\times C_{\phi(p_{2}^{a_{2}})}\times\dots\times C_{\phi(p_{t}^{a_{t}})}\end{eqnarray}

であり,$(\mathbb{Z}/2^{a}\mathbb{Z})^{\times}$ は $a=1,2$ のときそれぞれ $C_{1},C_{2}$ と同型で,$a\geq 3$ のとき $C_{2}\times C_{2^{a-2}}$ と同型である.

 

 

ではまた.

 

(途中,まちがいを指摘してもらって書き直しました.2017.6.12)

 

 

参考文献

Ireland, Kenneth; Rosen, Michael. 1990. A Classical Introduction to Modern Number Theory. New York: Springer-Verlag.

 

ベキ級数の収束半径とディリクレ級数の収束軸の話

こんにちは,ぱいです.

最近おもしろいと思ったことを書きます.

 

 

このごろディリクレ級数と呼ばれる級数を勉強しています.

ベキ級数と似た性質やびみょーに異なった性質とかがあって面白いので,ディリクレ級数の話を書く前にベキ級数の話をざーっとおさらいしておきます.

 

 

 数列 $\{a_{n}\}_{n\in\mathbb{N}}$ に対して $\displaystyle \sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}\ \ (z\in\mathbb{C})$ をベキ級数といいます.

 

$z_{0}\in\mathbb{C}$ に対して $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z_{0}^{n}$ が収束するとき,$\{a_{n}z_{0}^{n}\}_{n\in\mathbb{N}}$ は収束するので有界で,ある $C>0$ が存在して任意の $n\in\mathbb{N}$ で $|a_{n}z_{0}^{n}|<C $ となります. 

このとき任意の $z\in\mathbb{C},\ n\in\mathbb{N}$ で\begin{eqnarray}\displaystyle|a_{n}z^{n}|&<&C\left|\frac{z}{z_{0}}\right|^{n}\end{eqnarray}

なので,\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}|a_{n}z^{n}|&<&\sum_{n\in\mathbb{N}}C\left|\frac{z}{z_{0}}\right|^{n}\end{eqnarray}となります. よって,$\displaystyle\left|\frac{z}{z_{0}}\right|<1$ つまり $|z|<|z_{0}|$ ならベキ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ は絶対収束します.

そこで,$\displaystyle R_{0}=\sup\{|z|\mid \sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$は収束する$\}$ をベキ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ の収束半径といい,領域 $|z|<R_{0}$ を収束円盤といいます.

つまり,$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ は $|z|<R_{0}$ なら収束し,$|z|>R_{0}$ なら発散します.

 

ベキ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ の収束半径 $R_{0}$ は,$\displaystyle R_{0}=\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}$ で求められます.

まず $\displaystyle R_{0}\leq\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}$ を示します.

$|z|<R_{0}$ とすると $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ が収束するので $\{a_{n}z^{n}\}_{n\in\mathbb{N}}$ は有界で,ある $M>0$ が存在して任意の $n\in\mathbb{N}$ で\begin{eqnarray}|a_{n}z^{n}|&<&M\end{eqnarray}となります.このとき\begin{eqnarray}|a_{n}|^{-1/n}&>&M^{-1/n}|z|\end{eqnarray}となるので\begin{eqnarray}\displaystyle\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}&>&\liminf_{n\to\infty}M^{-1/n}|z|=|z|\end{eqnarray} となります.よって $\displaystyle R_{0}\leq\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}$ です.

逆に $\displaystyle R_{0}\geq\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}$ を示します.

$\displaystyle|z|<\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}=\sup_{n\in\mathbb{N}}\inf_{k>n}|a_{k}|^{-1/k}$ とすると,ある $n_{0}\in\mathbb{N}$ が存在して,\begin{eqnarray}\displaystyle|z|<\inf_{k>n_{0}}|a_{k}|^{-1/k}\end{eqnarray}となります.このとき\begin{eqnarray}\displaystyle\sup_{k>n_{0}}|z||a_{k}|^{1/k}<1\end{eqnarray}より $\displaystyle\sum_{k>n_{0}}|a_{k}z^{k}|$ は収束します.よって $|z|<R_{0}$ となり,$\displaystyle R_{0}\geq\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}$ です.

 

ベキ級数は収束円盤の内部では必ず収束し収束円盤の外部では必ず発散しますが,円周上では収束したり発散したり時と場合によっていろいろです.

たとえば $\displaystyle a_{n}=\frac{1}{n}$ のベキ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}\frac{z^{n}}{n}$ の収束半径は\begin{eqnarray}\displaystyle R_{0}&=&\liminf_{n\to\infty}\left(\frac{1}{n}\right)^{-1/n}\\&=&1\end{eqnarray}ですが,$z=1$ のとき級数は $+\infty$ に発散し,$z=-1$ のとき級数は $\log 2$ に収束します.

 

 

さて,そろそろディリクレ級数の話を書いていきます.

 

複素数列 $\{a_{n}\}_{n\in\mathbb{N}}$ と発散する狭義単調増加実数列 $\{\lambda_{n}\}_{n\in\mathbb{N}}$ に対して $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}\ \ (s\in\mathbb{C})$ をディリクレ級数といいます.(普段複素数は $z=x+iy$ と書きますが,ディリクレ級数を考えるときは $s=σ+it$ と書くことが多いらしいです.)

 

$\lambda_{n}=n$ のときは,$z=e^{-s}$ とおくとディリクレ級数はベキ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ となります. 

このベキ級数の収束半径を $R_{0}$ とし,$σ_{0}=\log\frac{1}{R_{0}}$ とおいてみましょう.

$|z|=|e^{-s}|=|e^{-σ}|$ なので,$\mathrm{Re}(s)>σ_{0}$ なら $|z|<R_{0}$ となり級数は収束します.

逆に $\mathrm{Re}(s)<σ_{0}$ なら $|z|>R_{0}$ となり級数は発散します.

($\mathrm{Re}(s)=σ_{0}$ のときは $|z|=R_{0}$ なので時と場合によっていろいろです.)

このように,ディリクレ級数を考えると,ベキ級数の収束円盤の円周 $|z|=R_{0}$ は $\mathrm{Re}(s)=σ_{0}$ という軸のような形になります.

 

一般にディリクレ級数には,ベキ級数の収束半径と似たような収束軸と呼ばれるものがあります.

 

まず,$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$ が $s=s_{0}=σ_{0}+it_{0}$ で収束するときこの級数が領域 $D_{0}:=\{s\in\mathbb{C}\mid\mathrm{Re}(s)>σ_{0}\}$ でコンパクト一様収束することを示します.

$a_{n}e^{-\lambda_{n}(s_{0}}$ を改めて $a_{n}$ とおけばいいので,$s_{0}=0$ のときを示せば十分です.

$\varepsilon>0$ に対して $\displaystyle D_{\varepsilon}:=\{s\in\mathbb{C}\mid|\arg s|\geq\frac{\pi}{2}-\varepsilon\}$ とおくと,任意のコンパクト集合 $K\subset D_{0}$ に対してある $\varepsilon>0$ で $K\subset D_{\varepsilon}$ となります.($K$ は有界閉だから.)

よって,任意の $\varepsilon>0$ に対して $D_{\varepsilon}$ で $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{C}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$ が一様収束することを示せば十分です.

$|\arg s|=\theta$ とおくと $\displaystyle\theta\geq\frac{\pi}{2}-\varepsilon$ よりある $C>0$ で $\displaystyle\frac{1}{\cos\theta}<C$ つまり $\displaystyle\frac{|s|}{σ}<C$ となります.

また,$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{C}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$ は $s=0$ である $S\in\mathbb{C}$ に収束するので,ある $N_{0}\in\mathbb{N}$ が存在し,$N>N_{0}$ なら $\displaystyle\left|\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}-S\right|<\frac{\varepsilon}{2(C+1)}$ となります.

この $N_{0}$ に対して,$N>M>N_{0}$ なら 

\begin{eqnarray}\displaystyle\left|\sum_{n\leq N}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}-\sum_{n\leq M}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}\right|&=&\left|\sum_{M<n\leq N}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}\right|\\&=&\left|\sum_{M<n\leq N}\left(\sum_{M<k\leq n}a_{k}-\sum_{M<k<n}a_{k}\right)e^{-\lambda_{n}s}\right|\\&=&\left|\sum_{M<n\leq N}\sum_{M<k\leq n}a_{k}e^{-\lambda_{n}s}-\sum_{M<n\leq N}\sum_{M<k<n}a_{k}e^{-\lambda_{n}s}\right|\\&=&\left|\sum_{M<n\leq N-1}\sum_{M<k\leq n}a_{k}\left(e^{-\lambda_{n}s}-e^{-\lambda_{n+1}s}\right)+\sum_{M<k\leq N}a_{k}e^{-\lambda_{N}s}\right|\\&\leq&\sum_{M<n\leq N-1}\left|\sum_{M<k\leq n}a_{k}\right|\left|e^{-\lambda_{n}s}-e^{-\lambda_{n+1}s}\right|+\left|\sum_{M<k\leq N}a_{k}\right|\left|e^{-\lambda_{N}s}\right|\\&=&\sum_{M<n\leq N-1}\left|\sum_{k\leq n}a_{k}-\sum_{k\leq M}a_{k}\right|\left|\int_{\lambda_{n}}^{\lambda_{n+1}}se^{-xs}dx\right|+\left|\sum_{k\leq n}a_{k}-\sum_{k\leq M}a_{k}\right|e^{-\lambda_{N}σ}\\&\leq&\sum_{M<n\leq N-1}\left(\left|\sum_{k\leq n}a_{k}-S\right|+\left|S-\sum_{k\leq M}a_{k}\right|\right)\left|\int_{\lambda_{n}}^{\lambda_{n+1}}se^{-xs}dx\right|+\left(\left|\sum_{k\leq N}a_{k}-S\right|+\left|S-\sum_{k\leq M}a_{k}\right|\right)e^{-\lambda_{N}σ}\\&<&\sum_{M<n\leq N-1}\left(\frac{\varepsilon}{2(C+1)}+\frac{\varepsilon}{2(C+1)}\right)\left|\int_{\lambda_{n}}^{\lambda{n+1}}se^{-xs}dx\right|+\left(\frac{\varepsilon}{2(C+1)}+\frac{\varepsilon}{2(C+1)}\right)e^{-\lambda{N}σ}\\&=&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(\sum_{M<n\leq N-1}\left|\int_{\lambda_{n}}^{\lambda_{n+1}}se^{-xs}dx\right|+e^{-\lambda_{N}σ}\right)\\&\leq&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(\sum_{M<n\leq N-1}\int_{\lambda_{n}}^{\lambda_{n+1}}\left|se^{-xs}\right|dx+e^{-\lambda_{N}σ}\right)\\&=&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(\sum_{M<n\leq N-1}\int_{\lambda_{n}}^{\lambda_{n+1}}|s|e^{-xσ}dx+e^{-\lambda_{N}σ}\right)\\&=&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(\sum_{M<n\leq N-1}\frac{|s|}{σ}\left(e^{-\lambda{n}σ}-e^{-\lambda_{n+1}σ}\right)+e^{-\lambda_{N}σ}\right)\\&=&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(\frac{|s|}{σ}\left(e^{-\lambda_{M+1}σ}-e^{-\lambda_{N}σ}\right)+e^{-\lambda{N}σ}\right)\\&<&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(C\left(e^{-\lambda_{M+1}σ}-e^{-\lambda_{N}σ}\right)+e^{-\lambda_{N}σ}\right)\\&<&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(Ce^{-\lambda_{M+1}}σ+e^{-\lambda_{N}σ}\right)\\&<&\frac{\varepsilon}{C+1}\left(Ce^{-\lambda_{N_{0}}σ}+e^{-\lambda_{N_{0}}σ}\right)\\&=&\varepsilon e^{-\lambda_{N_{0}}σ}\\&<&\varepsilon\end{eqnarray}

となるので,$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$ は $D_{\varepsilon}$ で一様収束します.

 

そこで,$\displaystyle A:=\{\mathrm{Re}(s)\mid\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$は収束する$\}$ に対して $A=\emptyset$ なら $σ_{0}:=+\infty$ とし $A\neq\emptyset$ なら $σ_{0}:=\inf A$ とし,この $σ_{0}$ をディリクレ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$ の収束軸といいます.

つまり,ディリクレ級数$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}e^{-\lambda_{n}s}$ は $σ>σ_{0}$ なら収束し,$σ<σ_{0}$ なら発散します.

 

 

さて,$\lambda_{n}=\log n$ のディリクレ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-s}$ を通常ディリクレ級数といいます.

 

通常ディリクレ級数 $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-s}$ の収束軸は $\displaystyle σ_{0}=\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}$ で求められます.

まず $\displaystyle σ_{0}\geq\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}$ を示します.

$σ_{0}=0$ としてよく,$σ>0$ なる $σ$ を任意にとります.

$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-σ}$ は収束するので有界で,ある $C>0$ が存在して任意の $N\in\mathbb{N}$ で

\begin{eqnarray}\displaystyle\left|\sum_{n\leq N}a_{n}n^{-σ}\right|<C\end{eqnarray}

となります.よって,任意の $N\in\mathbb{N}$ で

\begin{eqnarray}\displaystyle\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|&=&\left|\sum_{n\leq N}\left(a_{n}n^{-σ}\right)n^{σ}\right|\\&=&\left|\sum_{n\leq N}\left(\sum_{k\leq n}a_{k}k^{-σ}-\sum_{k\leq n-1}a_{k}k^{-σ}\right)n^{σ}\right|\\&=&\left|\sum_{n\leq N}\sum_{k\leq n}a_{k}k^{-σ}n^{σ}-\sum_{n\leq N}\sum_{k\leq n-1}a_{k}k^{-σ}n^{σ}\right|\\&=&\left|\sum_{n\leq N}\sum_{k\leq n}a_{k}k^{-σ}n^{σ}-\sum_{n\leq N-1}\sum_{k\leq n}a_{k}k^{-σ}(n+1)^{σ}\right|\\&=&\left|\sum_{n\leq N-1}\sum_{k\leq n}a_{k}k^{-σ}\left(n^{σ}-(n+1)^{σ}\right)+\sum_{k\leq N}a_{k}k^{-σ}N^{σ}\right|\\&\leq&\sum_{n\leq N-1}\left|\sum_{k\leq n}a_{k}k^{-σ}\right|\left((n+1)^{σ}-n^{σ}\right)+\left|\sum_{k\leq N}a_{k}k^{-σ}\right|N^{σ}\\&<&\sum_{n\leq N-1}C\left((n+1)^{σ}-n^{σ}\right)+CN^{σ}\\&=&C(N^{σ}-1^{σ})+CN^{σ}\\&<&2CN^{σ}\end{eqnarray}

より

\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}&<&\frac{\log 2C}{\log N}+σ\end{eqnarray}

となり

\begin{eqnarray}\displaystyle\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}&\leq&\limsup_{N\to\infty}\left(\frac{\log 2C}{\log N}+σ\right)\\&=&σ\end{eqnarray}

となります.よって $\displaystyle\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}\leq σ_{0}$ です.

逆に $\displaystyle σ_{0}\leq\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}$ を示します.

$\displaystyle σ>\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}=\inf_{N\in\mathbb{N}}\sup_{k\geq N}\frac{\log\left|\sum_{n\leq k}a_{n}\right|}{\log k}$ とします.

$\displaystyle\inf_{N\in\mathbb{N}}\sup_{k\geq N}\frac{\log\left|\sum_{n\leq k}a_{n}\right|}{\log k}<\alpha<σ$ なる $\alpha$ を任意にとると,任意の $N\in\mathbb{N}$ で

\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}&\leq&\alpha\end{eqnarray}

より

\begin{eqnarray}\displaystyle\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|&\leq&N^{\alpha}\end{eqnarray}

です.さて,任意の $N\in\mathbb{N}$ で

\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{n\leq N}a_{n}n^{-σ}&=&\sum_{n\leq N-1}\sum_{k\leq n}a_{k}\left(n^{-σ}-(n+1)^{-σ}\right)+\sum_{k\leq N}a_{k}N^{-σ}\\&=&\sum_{n\leq N}\sum_{k\leq n}a_{k}\int_{n}^{n+1}σx^{-σ-1}dx+N^{-σ}\sum_{k\leq N}a_{k}\end{eqnarray}

です.ここで, 

\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{n\leq N}\left|\sum_{k\leq n}a_{k}\int_{n}^{n+1}σx^{-σ-1}dx\right|&\leq&\sum_{n\leq N}\left|\sum_{k\leq n}a_{k}\right|\int_{n}^{n+1}\left|σx^{-σ-1}\right|dx\\&=&|σ|\sum_{n\leq N}\left|\sum_{k\leq n}a_{k}\right|\int_{n}^{n+1}x^{-σ-1}dx\\&\leq&|σ|\sum_{n\leq N}n^{\alpha}\int_{n}^{n+1}x^{-σ-1}dx\\&\leq&|σ|\sum_{n\leq N}n^{\alpha}\int_{n}^{n+1}n^{-σ-1}dx\\&=&|σ|\sum_{n\leq N}n^{\alpha-σ-1}\\&<&|σ|\left(1+\int_{1}^{N}x^{\alpha-σ-1}dx\right)\\&=&|σ|\left(1+\frac{1-N^{\alpha-σ}}{σ-\alpha}\right)\\&<&|σ|\left(1+\frac{1}{σ-\alpha}\right)\end{eqnarray} 

より $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}\sum_{k\leq n}a_{k}\int_{n}^{n+1}σx^{-σ-1}dx$ は絶対収束します.また,

\begin{eqnarray}\displaystyle\left|\leq N^{-σ}\sum_{k\leq N}a_{k}\right|&\leq&N^{-σ}\sum_{k\leq N}|a_{k}|\\&\leq&N^{-σ}N^{\alpha}\\&=&N^{\alpha-σ}\end{eqnarray}

で $\alpha-σ<0$ なので

\begin{eqnarray}\displaystyle\lim_{N\to\infty}\left|N^{-σ}\sum_{k\leq N}a_{k}\right|=0\end{eqnarray}

となります.よって $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-σ}$ は収束し,$σ>σ_{0}$ となります.つまり $\displaystyle σ_{0}\leq\limsup_{N\to\infty}\frac{\log\left|\sum_{n\leq N}a_{n}\right|}{\log N}$ です.

 

さて,ベキ級数のときは $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}z^{n}$ と $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}|a_{n}|z^{n}$ の収束半径はどちらも $\displaystyle R_{0}=\liminf_{n\to\infty}|a_{n}|^{-1/n}$ で同じでしたが,通常ディリクレ級数の収束軸は $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-s}$ と $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}|a_{n}|n^{-s}$ とでズレる場合もあります.

たとえば,リーマンのゼータ関数 $\displaystyle\zeta(s)=\sum_{n\in\mathbb{N}}n^{-s}$ の収束軸は $σ_{0}=1$ ですが,その交代級数 $\sum_{n\in\mathbb{N}}(-1)^{n-1}n^{-s}$ の収束軸は $σ_{0}=0$ です.

 

しかし,係数に絶対値をつけても収束軸はせいぜい正の方向に $1$ までしかズレません.

つまり, $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-s}$ の収束軸を $σ_{0}$,$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}|a_{n}|n^{-s}$ の収束軸を $σ_{1}$ とすると

\begin{eqnarray}σ_{0}\leq σ_{1}\leq σ_{0}+1\end{eqnarray}

となります.

$σ_{0}\leq σ_{1}$ はいいので,$σ_{1}\leq σ_{0}+1$ を示します.

ここで,$σ_{0}=0$ としてよいので,$σ>1$ なら $σ>σ_{1}$ となることを示します.

$0<\alpha<σ-1$ なる $\alpha$ を任意にとると,$\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-\alpha}$ は収束するので $\{a_{n}n^{-\alpha}\}_{n\in\mathbb{N}}$ は収束し有界で,ある $C>0$ が存在し任意の $n\in\mathbb{N}$ で

\begin{eqnarray}\left|a_{n}n^{-\alpha}\right|<C\end{eqnarray}

となります. このとき

\begin{eqnarray}|a_{n}|n^{-σ}<Cn^{\alpha-σ}\end{eqnarray}

となるので,

\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}|a_{n}|n^{-σ}&\leq&\sum_{n\in\mathbb{N}}Cn^{\alpha-σ}\\&=&C\zeta(σ-\alpha)\end{eqnarray}

となります.ここで $\zeta(s)$ の収束軸は $σ_{0}=1$ で $σ-\alpha>1$ なので,$\zeta(σ-\alpha)$ は収束します.よって $\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{N}}a_{n}n^{-σ}$ は収束し,$σ>σ_{1}$ となります.

 

 

こんな感じで,ディリクレ級数とベキ級数は似たような性質もあるしびみょーに異なった性質もあっておもしろいです. 

 

以上,最近おもしろいと思った話でした.

 

 

参考文献

D.B.ザギヤー (1990)『数論入門-ゼータ関数と2次体-』(片山孝次訳) 岩波書店

 

 

自然数を見つめ直しました

こんにちは,ぱいです.

無事進級できて4回生になりました.ほっとしてます.

 

このあいだ数学の講演をする機会があり,ペアノの公理から出発して自然数の和や積を定義する話をしました.

せっかくなので,ここにもそういう話を書いておこうと思います.

記事の最後の方に,講演会のノートのpdfも貼っておくつもりです.

 

 

さて,自然数といったら何を思い浮かべますか.

たぶん,「0,1,2,3,$\dots$」と続いていくものというふうに思うと思います.

でも,じゃあ,「0,1,2,3,$\dots$」と続いていくというのは数学的に言うとどういうことなのでしょうか.

自然数のこの特徴は,19世紀にイタリアの数学者ペアノによって次のように述べられました.つまり,次のペアノの公理と呼ばれるものをみたすものを自然数と呼ぶことにしました.

 

定義 (ペアノの公理). 集合 $\mathbb{N}$ と $0$ と呼ばれるものと写像 $f:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ が次の4つをみたすとき,$(\mathbb{N},0,f)$ はペアノの公理をみたすといい,$f(n)$ を $n$ の次の元と呼ぶ( $f(n)$ は $n+1$ のような気持ち).

 (i) $0\in\mathbb{N}$ である.

 (ii) $f$ は単射である.

 (iii) $0\notin f(\mathbb{N})$ である.

 (iv) $A\subseteq\mathbb{N}$ は $0\in A,\ f(A)\subseteq A$ なら $A=\mathbb{N}$ となる.

 

これは,自然数というものが $0\mapsto f(0)\mapsto f(f(0))\mapsto f(f(f(0)))\mapsto\dots$ と順番に列のように並んだ感じに得られて,(ii)はまっすぐ並んでる横から変なものが割り込んでこないということを述べています.

(i)と(ii)は,その列の端っこが $0$ と呼ばれるものであるということを言っています.

(iv)は数学的帰納法のことです.

数学的帰納法とは何だったか思い出してみると,「条件 $P$ について,$n=0$ で $P$ が成り立ち,$n=k$ で $P$ が成り立てば $n=k+1$ でも $P$ が成り立つとき,任意の $n\in\mathbb{N}$ で $P$ が成り立つ」というものでした.

これは,$A=\{k\in\mathbb{N}\mid n=k$ で $P$ が成立$\}$とすると「$0\in A,\ k\in A\Rightarrow f(k)\in A$」ということで,(iv)と同じであると分かります.

 ペアノの公理は英語で Peano Axioms というので,以下 P.A. と略します.

また,以下特にことわらない限り $(\mathbb{N},0,f)$ は P.A. をみたすものとします. 

 

さて,ここで便利な定理を紹介しておきましょう.

 

定理1.集合 $X$ と元 $a\in X$,写像 $g: X\to X$ に対して,次のような写像 $\varphi:\mathbb{N}\to X$ がただひとつ存在する.

 (i) $\varphi(0)=a$ である.

 (ii) $\varphi(k)$ まで定義されているとき,$\varphi(f(k))=g(\varphi(k))$ である.

 

証明の前に,この定理の意味を見てみましょう.

$X$ の世界で $g(x)$ を $x$ の次の元のようなものだと思ってこの定理を眺めてみると,(i)は $X$ の世界の端っこのようなものが $a$ であるということを,(ii)は $k$ の次の元は $\varphi(k)$ の次の元のようなものに対応しているということを述べています.

では,証明をしていきましょう.

 

(証明)

まず,条件をみたす写像の存在を示す.

 $A\subseteq\mathbb{N}\times X$ についての次の2つの条件を☆とする.

 (☆1) $(0,a)\in A$ である.

 (☆2) $(k,x)\in A$ なら $(f(k),g(x))\in A$ である.

 ☆をみたす集合すべての共通部分を $B$ とする.

$B$は☆をみたすことがすぐわかるので,$B$は☆をみたす最小の集合である.(この事実を後で使うので△と呼ぶことにする.)

写像 $p:B\to\mathbb{N}$ を $p( (n,x) ):=n$ で定める.

 

この $p$ が全射であるということを示す.

$p( (0,a) )=0$ より $0\in p(B)$ である.また,$k\in p(B)$ のときある $x\in X$ で $(k,x)\in B$ だから $(f(k),g(x))\in B$ で $p( (f(k),g(x)) )=f(k)$ となるので $f(k)\in p(B)$.よって,P.A.(iv)より $p(B)=\mathbb{N}$ となる.

つまり $p$ は全射である.

 

次に,この $p$ が単射であることを示す.

そのためには,「$\forall(k,x),(l,y)\in B,\ p( (k,x) )=p( (l,y) )\Rightarrow(k,x)=(l,y)$」つまり「$\forall(k,x),(l,y)\in B,\ k=l\Rightarrow (k,x)=(l,y)$」を示せばよい.つまり,「\forall k\in\mathbb{N},\ (k,x),\ (k,y)\in B\Rightarrow x=y」を示せばよい.

そこで,$C:=\{k\in\mathbb{N}\mid(k,x),\ (k,y)\in B\Rightarrow x=y \}$ とする.

$0\in C$ を背理法で示す.

$0\notin C$ と仮定すると,ある $x\in X$ で $(0,x)\in B$ だけど $x\neq a$ となる.

$B$ から $(0,x)$ を取り除いた集合を $B'$ とすると,この $B'$ も☆をみたすことがすぐわかる.

ところが $B'\subset B$ なのでこれは△に矛盾する.よって $0\in C$ である.

さらに $k\in C\Rightarrow f(k)\in C$ も背理法で示す.

ある $k\in\mathbb{N}$ で $k\in C$ だけど $f(k)\notin C$ となると仮定する.

$p$ は全射だったから $k$ に対してある $x\in X$ で $(k,x)\in B$ となり,$(f(k),g(x))$ である.

今 $f(k)\notin C$ だから,ある $y\neq g(x)$ で $(f(k), y)\in B$ となる.

$B$ から $(f(k),y)$ を取り除いた集合を $B''$ とする.

$B''$ は $B$ より小さいので,△より,$B''$ は☆をみたさない.

P.A.(iii)より $0\neq f(k)$ なので,$(0,a)\in B''$ で(☆1)はみたされている.よって,$B''$ は(☆2)をみたさない.つまり,ある $(h,z)\in\mathbb{N}\times X$ で $(h,z)\in B''$ だけど $(f(h),g(z))\notin B''$ となる.ところで $(h,z)\in B$ より $(f(h),g(z))\in B$ で,$B$ から取り除いた元は $(f(k),y)$ だけだったから,$(f(h),g(z))=(f(k),y)$ である.P.A.(ii)より $f$ は単射だから $h=k$ となり,今 $k\in C$ だったから $x=z$ となる.よって $g(x)=g(z)$ となるが,$g(z)=y$ と $y\neq g(x)$ は矛盾する.

したがって $k\in C\Rightarrow f(k)\in C$ となる.

よって,P.A.(iv)より $C=\mathbb{N}$ となる.つまり $p$ は単射である.

 

以上から $p$ は全単射で,逆写像 $p^{-1}$ が存在する.

$q: B\to X$ を $q( (n,x) ):=x$ で定めて,$\varphi:\mathbb{N}\to X$ を $\varphi:=p^{-1}\circ q$ とする.

つまり,$\varphi(n)$ とは,$(n,x)\in B$ となる $x$ のことである.

$p( (0,a) )=0$ より $\varphi(0)=a$ である.

また,$\varphi(k)$ まで定義されているとき $(k,\varphi(k))\in B$ より $(f(k),g(\varphi(k)))\in B$ より $\varphi(f(k))=g(\varphi(k))$ である.

つまりこの $\varphi$ は定理の条件をみたしている.

 

今度は,このような写像がひとつしか存在しないことを示す.

$\varphi$ と $\varphi'$ がともに定理の条件をみたしているとする.

$\varphi=\varphi'$ となることを示せばよい.つまり,$\forall n\in\mathbb{N},\ \varphi(n)=\varphi'(n)$ を示せばよい.

そこで,$D:=\{n\in\mathbb{N}\mid\varphi(n)=\varphi'(n) \}$ とする.

$\varphi(0)=a,\ \varphi'(0)=a$ より $0\in D$ である.

$n\in D$ のとき $\varphi(f(n))=g(\varphi(n))=g(\varphi'(n))=\varphi'(f(n))$ より $f(n)\in D$ となる.

よって,P.A.(iv)より $D=\mathbb{N}$ となる.$■$

 

この定理は便利なので後でよく使います.

 

さて,ペアノの公理をみたす $\mathbb{N}$ の元を自然数と呼ぼうということでしたが,そのような集合がいろいろあったら困りますよね.思い浮かべてる自然数が人によって違ったら不便です.

でも,ペアノの公理をみたす集合は本質的にひとつしか存在しないということが次の定理によって分かり,安心できます.

 

定理2.$(\mathbb{N},0,f)$ と $(\mathbb{N}',0',f')$ がともにP.A.をみたすとき,次のような全単射 $\varphi:\mathbb{N}\to\mathbb{N}'$ がただひとつ存在する.

 (i) $\varphi(0)=0'$ である.

 (ii) $\varphi(k)$ まで定義されているとき $\varphi(f(k))=f'(\varphi(k))$ である.

 

(証明)

$\varphi$ の存在と一意性は,定理1で $X=\mathbb{N}',a=0',g=f'$ とすればよい.

また,同じようにして,次のような写像 $\varphi'\mathbb{N}'\to\mathbb{N}$ の存在も分かる.

 (i) $\varphi'(0')=0$ である.

 (ii) $\varphi'(k')$ まで定義されているとき $\varphi'(f'(k'))=f(\varphi'(k'))$ である.

さて,$A:=\{n\in\mathbb{N}\mid\varphi'(\varphi(n))=n \}$ とする.

$\varphi'(\varphi(0))=\varphi'(0')=0$ より $0\in A$ である.

$n\in A$ のとき $\varphi'(\varphi(f(n)))=\varphi'(f'(\varphi(n)))=f(\varphi'(\varphi(n)))=f(n)$ より $f(n)\in A$ となる.

以上よりP.A.(iv)より $A=\mathbb{N}$ となる.同様にして,$\{n\in\mathbb{N}\mid\varphi'(\varphi(n'))=n' \}=\mathbb{N}$ となる.

よって$\varphi'$ は $\varphi$ の逆写像である.

したがって$\varphi$ は全単射である.$■$

 

定義(自然数).ペアノの公理をみたす $\mathbb{N}$ の元を自然数と呼ぶ.

 

さて,無事に自然数が定義できたので,今度は足し算を定義していきましょう.

そのために,まずは次の定理を見てみましょう.

 

定理3.各 $n\in\mathbb{N}$ に対して,次のような写像  $σ_{n}:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ がただひとつ存在する.

 (i) $σ_{n}(0)=n$ である.

 (ii) $σ_{n}(k)$ まで定義されているとき $σ_{n}(f(k))=f(σ_{n}(k))$ である.

 

(証明)

定理1で $X=\mathbb{N},a=n,g=f$とすればよい.$■$

 

これは,$σ_{m}(n)$ で $m+n$ を定義しようという気持ちのものです.

そういう気持ちでこの定理を眺めてみると,(i)は $n$ に $0$ を足しても $n$ のままということを,(ii)は $n$ に $k$ の次の元を足すと $n+k$ の次の元と同じになるということを述べていると分かります.

では,この写像が普通の足し算っぽい基本的な性質をきちんとみたしてくれているか確認してみましょう.

 

定理4.任意の $l,m,n\in\mathbb{N}$ で次が成り立つ.

 (i) (結合法則) $σ_{σ_{l}(m)}(n)=σ_{l}(σ_{m}(n))$

 (ii) (交換法則) $σ_{m}(n)=σ_{n}(m)$

 (iii) (簡約法則) $σ_{l}(n)=σ_{m}(n)\Rightarrow l=m $

 

(証明)

(i)

各 $l,m\in\mathbb{N}$ に対して $A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{σ_{l}(m)}(n)=σ_{l}(σ_{m}(n)) \}$ とする.

\begin{eqnarray}σ_{σ_{l}(m)}(0)&=&σ_{l}(m)\\&=&σ_{l}(σ_{m}(0))\end{eqnarray}

より $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき,

\begin{eqnarray}σ_{σ_{l}(m)}(f(n))&=&f(σ_{σ_{l}(m)}(n))\\&=&f(σ_{l}(σ_{m}(n)))\\&=&σ_{l}(f(σ_{m}(n)))\\&=&σ_{l}(σ_{m}(f(n)))\end{eqnarray}

より $f(n)\in A_{l,m}$ である.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる.

 

(ii)

$A:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{n}(0)=σ_{0}(n) \}$ とする.

当然 $0\in A$ である.

また, $n\in A$ のとき

\begin{eqnarray}σ_{f(n)}(0)&=&f(n)\\&=&f(σ_{n}(0))\\&=&f(σ_{0}(n))\\&=&σ_{0}(f(n))\end{eqnarray}

より $f(n)\in A$ となる.

よってP.A.(iv)より $A=\mathbb{N}$ となる.

また,$B:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{n}(f(0))=σ_{f(0)}(n) \}$ とする.

$f(0)\in A$ より $0\in B$ である.

また, $n\in B$のとき

\begin{eqnarray}σ_{f(n)}(f(0))&=&f(σ_{f(n)}(0))\\&=&f(f(n))\\&=&f(f(σ_{n}(0)))\\&=&f(σ_{n}(f(0)))\\&=&f(σ_{f(0)}(n))\\&=&σ_{f(0)}(f(n))\end{eqnarray}

より $f(n)\in B$ となる.

よってP.A.(iv)より $B=\mathbb{N}$ となる.

さて,各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $C_{n}:=\{m\in\mathbb{N}\mid σ_{m}(n)=σ_{n}(m) \}$ とする.

$A=\mathbb{N}$ より $0\in B_{n}$ である.

また,$m\in B_{n}$ のとき

\begin{eqnarray}σ_{f(m)}(n)&=&σ_{σ_{m}(f(0))}(n)\\&=&σ_{m}(σ_{f(0)}(n))\\&=&σ_{m}(σ_{n}(f(0)))\\&=&σ_{σ_{m}(n)}(f(0))\\&=&σ_{σ_{n}(m)}(f(0))\\&=&σ_{n}(σ_{m}(f(0))\\&=&σ_{n}(f(m))\end{eqnarray}

より $f(m)\in C_{n}$ となる.

よってP.A.(iv)より $C_{n}=\mathbb{N}$ となる.

 

(iii)

対偶「$l\neq m\Rightarrow σ_{l}(n)\neq σ_{m}(n)\ (n\in\mathbb{N})$」を示す.

$l\neq m$ なる $l,m\in\mathbb{N}$ を任意にとり,$A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid σ_{l}(n)\neqσ_{m}(n) \}$ とする.

まず,$σ_{l},\ σ_{m}$ の定義から $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき $f$ は単射だから $f(σ_{l}(n))\neq f(σ_{m}(n))$ つまり $σ_{l}(f(n))\neq σ_{m}(f(n))$ となり $f(n)\in A_{l,m}$ となる.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる. $■$

 

定義(自然数の和).$σ_{m}(n)$ を $m $ と $n$ の和と呼び,$m+n$ と略記する.

 

これでようやく胸を張って自然数の足し算を扱えるようになりました.

同じように自然数の掛け算も定義してみましょう.

 

定理5.各 $n\in\mathbb{N}$ に対して,次のような写像 $\pi_{n}:\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ がただひとつ存在する.

 (i) $\pi_{n}(0)=0$ である.

 (ii) $\pi_{n}(k)$ まで定義されているとき $\pi_{n}(f(k))=σ_{n}(\pi_{n}(k))$ つまり $\pi_{n}(k+1)=\pi_{n}(k)+n$ である.

 

(証明)

定理1で $X=\mathbb{N},\ a=0,\ g=σ_{n}$ とすればよい. $■$

 

これも,$\pi_{m}(n)$ によって積 $m\cdot n$ を定義したいという気持ちの定理です.

では,最後にこの写像自然数の掛け算っぽく振る舞ってくれることを確認しましょう.

(もう足し算は普通に扱えることになったので,面倒なので+という記号を使います.

また,$f(0)$ のことを $1$ と略記します.)

 

定理6.任意の $l,m,n\in\mathbb{N}$ で次が成り立つ.

 (i) (分配法則) $\pi_{l}(m+n)=\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n)$

 (ii) (結合法則) $\pi_{\pi_{l}}(m)(n)=\pi_{l}(\pi_{m}(n))$

 (iii) (交換法則) $\pi_{m}(n)=\pi_{n}(m)$

 

(証明)

(i)

各 $l,m\in\mathbb{N}$ に対して $A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid \pi_{l}(m+n)=\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n) \}$ とする.

$\pi_{l}(m+0)=\pi_{l}(m),\ \pi_{l}(m)+\pi_{l}(0)=\pi_{l}(m)+0=\pi_{l}(m)$ より $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき

\begin{eqnarray}\pi_{l}(m+(n+1))&=&\pi_{l}*1+l\\&=&\pi_{l}(m)+(\pi_{l}(n)+l)\\&=&\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n+1)\end{eqnarray}

より $n+1\in A_{l,m}$ となる.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる.

 

(ii)

各 $l,m\in\mathbb{N}$ に対して $A_{l,m}:=\{n\in\mathbb{N}\mid \pi_{\pi_{l}(m)}(n)=\pi_{l}(\pi_{m}(n)) \}$ とする.

$\pi_(\pi_{l}(m))(0)=0,\ \pi_{l}(\pi_{m}(0))=\pi_{l}(0)=0$ より $0\in A_{l,m}$ である.

また,$n\in A_{l,m}$ のとき

\begin{eqnarray}\pi_{\pi_{l}(m)}(n+1)&=&\pi_{\pi_{l}(m)}(n)+\pi_{l}(m)\\&=&\pi_{l}(\pi_{m}(n))+\pi_{l}(m)\\&=&\pi_{l}(\pi_{m}(n)+m)\\&=&\pi_{l}(\pi_{m}(n+1))\end{eqnarray} 

より $n+1\in A_{l,m}$ となる.

よってP.A.(iv)より $A_{l,m}=\mathbb{N}$ となる.

 

(iii)

まず $A:=\{n\in\mathbb{N}\mid \pi_{0}(n)=0 \}$ とする.

当然,$0\in A$ である.

また,$n\in A$ のとき

\begin{eqnarray}\pi_{0}(n+1)&=&\pi_{0}(n)+0\\&=&0\end{eqnarray}

より $n+1\in A$ となる.

よってP.A.(iv)より $A=\mathbb{N}$ となる.

また,各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $B_{n}:=\{m\in\mathbb{N}\mid \pi_{n+1}(m)=\pi_{n}(m)+m \}$ とする.

当然,$0\in B_{n}$ である.

また,$m\in B_{n}$ のとき,

\begin{eqnarray}\pi_{n+1}(m+1)&=&\pi_{n+1}(m)+(n+1)\\&=&(\pi_{n}(m)+m)+(n+1)\\&=&(\pi_{m}(n)+n)+(m+1)\\&=&\pi_{n}(m+1)+(m+1)\end{eqnarray} 

より $m+1\in B_{n}$ となる.

よってP.A.(iv)より $B_{n}=\mathbb{N}$ となる.

さて,各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $C_{n}:=\{m\in\mathbb{N}\mid \pi_{m}(n)=\pi_{n}(m) \}$ とする.

$A=\mathbb{N}$ より $0\in C_{n}$ である.

また,$m\in C_{n}$ のとき,

\begin{eqnarray}\pi_{m+1}(n)&=&\pi_{m}(n)+n\\&=&\pi_{n}(m)+n\\&=&\pi_{n}(m+1)\end{eqnarray} 

より $m+1\in C_{n}$ となる.

よってP.A.(iv)より $C_{n}=\mathbb{N}$ となる. $■$

 

定義(自然数の積).$\pi_{m}(n)$ を  $m $ と $n$ の積と呼び,$m\cdot n$ や $mn$ と記す.

 

これで自然数の掛け算も使えるようになりました.

自然数には他にも大小関係とかいろんな構造が入っているので,暇なときに考えてみると楽しいかもしれません.

 

最後に,講演会で話したやつ(高校生向けに,自然数を $1$ からスタートした)のノートを置いておきます. 

(ドロップボックスのアカウント持ってないと見れないかも)

www.dropbox.com

 

参考文献

彌永昌吉(1972) 『数の体系(上)』 岩波新書

 

 

*1:m+n)+1)\\&=&\pi_{l}(m+n)+l\\&=&(\pi_{l}(m)+\pi_{l}(n

1/(1+x^n) の積分の話

こんにちは. ぱいです.

期末試験とかでバタバタしてますが元気に生きてます.

 

複素関数論の再履のテストを昨日受けてきました.

去年は本当に1ミリも勉強をしていなくて何もわからなかったのですが, 今年はちゃんと勉強しました.

勉強してみると, 一致の定理の結果とかはビックリやし, 代数学の基本定理複素関数論のいろんな考えかたを使って証明できたり, いろいろ面白さを感じれました.(小並感)

実関数の積分が留数定理を使って求められたりするのも面白いと思いました.

たとえば, 期末試験の問題で次の積分を計算せよっていう問題がありました.

$\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\cfrac{1}{1+x^{6}}dx$

これをちょこっと一般化したもの, つまり次のような積分を暇だったので計算してみました.( $n$ が奇数のときがあるので積分区間をびみょーに変えてます.)

$I=\displaystyle\int_{0}^{\infty}\cfrac{1}{1+x^{n}}dx\hspace{1em}(n\geq 2)$

自分のこれまでのブログの記事とか見返してみると代数の話ばっかりだったので, たまにはこういう微積とかの話も書いてみよーかなと思って, 書きます.

 

複素関数 $f(z)=\cfrac{1}{1+z^{n}}$ に対して, 次のような $C_{1},\ C_{2},\ C_{3}$ で反時計回りの積分経路 $C=C_{1}+C_{2}+C_{3}$ を考える.

$R$ を十分大きな数として, $C_{1}$ は原点から実軸に沿って $R$ までまっすぐ進み, $C_{2}$ は $R$ から $Re^{2\pi i/n}$ までの原点を中心とした円弧で, $C_{3}$ は $Re^{2\pi i/n}$ から原点までまっすぐ進む.

 

$\displaystyle J_{k}:=\int_{C_{k}}f(z)dz$ とすると

$\displaystyle \lim_{R\to\infty}J_{1}=I,\\ \displaystyle\lim_{R\to\infty}J_{2}=0,\\ \displaystyle\lim_{R\to\infty} J_{3}=-e^{2\pi i/n}I$

なので,

$\displaystyle \lim_{R\to\infty}\int_{C}f(z)dz=(1-e^{2\pi i/n})I$

となる.

 

また, $C$ で囲まれた領域内の $f$ の極は $1$位の極 $e^{\pi i/n}$ だけなので, 留数定理より

$\displaystyle \int_{C}f(z)dz=2\pi i{\rm Res}(f,\ e^{\pi i/n})$

となる.ここで $\alpha=e^{\pi i/n}$ としてこの留数を計算すると $f(z)=\displaystyle \frac{1}{(z-\alpha)\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}\alpha^{k}z^{n-1-k}}$ より 

${\rm Res}(f,\ \alpha)=\lim_{z\to\alpha}\ (z-\alpha)\cfrac{1}{(z-\alpha)\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}\alpha^{k}z^{n-1-k}}=\cfrac{1}{n\alpha^{n-1}}=\cfrac{1}{n(-e^{-\pi i/n})}$

となる.

 

以上から

$\displaystyle (1-e^{2\pi i/n})I=2\pi i\cfrac{1}{n(-e^{-\pi i/n})}$

となるので

$\displaystyle I=\cfrac{2\pi i}{n}・\cfrac{1}{(1-e^{2\pi i/n})(-e^{-\pi i/n})}=\cfrac{2\pi i}{n}・\cfrac{1}{e^{\pi i/n}-e^{-\pi i/n}}=\cfrac{\cfrac{\pi}{n}}{\sin\cfrac{\pi}{n}}$

となる. 多分. (合ってるのか分からないので違ったら言ってください.)

 

 

留数定理を使うと他にも実関数のいろんな積分が計算できたりして, 楽しかったです.

春休みに時間があったらもうちょっと色々勉強してみるのもいいかも と思いました.

 

 

おしまい.

 

イデアルの準素分解の話

こんにちは. 最近は友達とのんびりアティマクを読んでます.

このあいだ4章の準素分解のところを発表しました.忘れないうちに何か書こーみたいな感じで何か書いていきます.

 

 

まず, 準素イデアルの定義.

$A$ が環, $\mathfrak{q}$ がそのイデアルで次をみたすとき,$\mathfrak{q}$ は $A$ の準素イデアルであるという.

$xy\in\mathfrak{q}$ なら $x\in\mathfrak{q}$ または $y\in\sqrt{\mathfrak{q}}$.

 これを言い換えると

剰余環 $A/\mathfrak{q}$ で $\bar{x}\bar{y}=\bar{0}$ なら $\bar{x}=\bar{0}$ または $\bar{y}$ は冪零.

よって,$\mathfrak{q}$ が準素イデアルであるための条件は,$A/\mathfrak{q}$ の零因子がすべて冪零であること.

 

 

準素イデアルの簡単な性質を見てみる.

 

・素イデアルは準素イデアルである.

(証明)それはそう. $■$

 

・準素イデアルの縮約はまた準素イデアルである.

(証明)$f:A\to B$ を環の準同型として $\mathfrak{q}$ を $B$ の準素イデアルとする.$xy\in f^{-1}(\mathfrak{q}),\ x\notin f^{-1}(\mathfrak{q})$ なる $x,y\in f^{-1}(\mathfrak{q})$ を任意にとる.このとき,$\mathfrak{q}$ は準素イデアルで $f(x)f(y)\in\mathfrak{q},\ f(x)\notin\mathfrak{q}$ だから,ある $n\in\mathbb{N}$ で $f(y)^{n}\in\mathfrak{q}$ となる.つまり $f(y^{n})=f(y)^{n}\in\mathfrak{q}$ となるので, $y\in\sqrt{f^{-1}(\mathfrak{q})}$ となる.$■$

 

・$A$ の準素イデアル $\mathfrak{q}$ に対して根基 $\sqrt{\mathfrak{q}}$ は, $\mathfrak{q}$ を含む最小の素イデアルである.

(証明)  $\sqrt{\mathfrak{q}}$ は $\mathfrak{q}$ を含むすべての素イデアルの共通部分なので, あとは $\sqrt{\mathfrak{q}}$ が素イデアルであることを示せばよい.

$xy\in\sqrt{\mathfrak{q}},\ x\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ なる$x,\ y\in A$を任意にとる. ある $n\in\mathbb{N}$ で $(xy)^{n}\in\mathfrak{q}$ となり, $A$ は可換環だから $x^{n}y^{n}\in\mathfrak{q}$ となる.$x\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ より $x^{n}\notin\mathfrak{q}$ で,$\mathfrak{q}$ は準素イデアルだから, $y^{n}\in\sqrt{\mathfrak{q}}$ となる.よって $y\in\sqrt{\mathfrak{q}}$ となる. $■$

※準素イデアル $\mathfrak{q}$ が $\mathfrak{p}=\sqrt{\mathfrak{q}}$ をみたすとき, $\mathfrak{q}$ は $\mathfrak{p}-$準素イデアルであるという.

 

・$\mathfrak{p}$ が $A$ の単項素イデアルで $\mathfrak{q}$ が $\mathfrak{p}-$準素イデアルのとき, ある$n\in\mathbb{N}$ で $\mathfrak{q}=\mathfrak{p}^{n}$ となる.

(証明) $\mathfrak{p}=(p)$ とする.$p\in\sqrt{\mathfrak{q}}$ だから, $p$ のある冪 $p^{n}$ が $\sqrt{\mathfrak{q}}$ に含まれる. そうなるような自然数のうち最小のものを $n$ とする.

この $n$ で明らかに $\mathfrak{p}^{n}\subseteq\mathfrak{q}$ となる.

逆に $\mathfrak{q}\subseteq\mathfrak{p}^{n}$ となることを背理法で示す.

$a\in\mathfrak{q},\ a\notin\mathfrak{p}^{n}$ なる $a\in A$ が存在すると仮定する. $a\in\sqrt{\mathfrak{q}}=(p)$ よりある $a_{1}\in A$ で $a=a_{1}p$ と書ける. $a_{1}\in(p)$ のときはまたある $a_{2}\in A$ で $a_{1}=a_{2}p$ と書ける. $a_{k}\in A$ まで定義されて $a_{k}\in(p)$ のときはある $a_{k+1}\in A$ で $a_{k}=a_{k+1}p$ と表せる.各 $k\in\mathbb{N}$ に対して $a=a_{k}p^{k}$ である. 今, $a\notin\mathfrak{p}^{n}$ だから, $n$回目まででこの操作は止まる. つまり, ある $m<n$ で $a_{m}\notin(p)$ となる. このとき, $a_{m}p^{m}=a\in\mathfrak{q},\ a_{m}\notin(p)=\sqrt{\mathfrak{q}}$ より $p^{m}\in\mathfrak{q}$ となるので, $n$ の最小性から $n\leq m $ となる. 以上より $m<n,\ n\leq m $ であるが, これは矛盾している. よって, $\mathfrak{q}\subseteq{p}^{n}$ となる. $■$

 

 

準素イデアルの例をいろいろ見ていこう.

 

$\mathbb{Z}$ の準素イデアルは $(0)$ と $(p^{n})$ だけである.ただし $p$ は素数で $n$ は自然数

(証明)$\mathbb{Z}$ の素イデアルは $(0)$ と $(p)$ だけだから,さっきの命題を適用すればいい. $■$

 

イデアル素数の一般化っぽいものであったが,準素イデアル素数の冪を一般化したものっぽいものであることが,この例から分かる.

 

$\sqrt{\mathfrak{q}}$ が単項イデアルのときは $\mathfrak{q}$ は $\sqrt{\mathfrak{q}}$ の冪となるが, そうでないときは $\mathfrak{q}$ は $\sqrt{\mathfrak{q}}$ の冪とはならないこともある.そのような反例が次である.

 

多項式環 $A:=k[x,\ y]$ で $\mathfrak{q}:=(x,\ y^{2})$ とする.

写像

$\varphi:k[y]\ni f\ \mapsto\  \bar{f}\in A/\mathfrak{q}$

全射で( $A$ において $x$ でくくれる項は $A/\mathfrak{q}$ で消えるから), 準同型である. 核は $\rm{ker}$$\varphi=(y^{2})$ なので, 準同型定理より $k[y^{2}]/(y^{2})\cong A/\mathfrak{q}$ となる.

$k[y]/(y^{2})$ の零因子 $\bar{f}$ を任意にとる. ある $\bar{g}\in k[y]/(y^{2}),\ \bar{g}\neq\bar{0}$ で $\bar{f}\bar{g}=\bar{0}$ となる. $\bar{f}$ の任意の代表元 $f$ について, $f$ の定数項は $0$ なので $f^{2}\in(y^{2})$ となる. よって, $\bar{f}^{2}=\bar{0}$ となり, $\bar{f}$ は冪零元である. したがって, $A$ で $\mathfrak{q}$ は準素イデアルである.

$\mathfrak{p}:=\sqrt{\mathfrak{q}}$ とすると

$\mathfrak{p}=\{\displaystyle{\sum_{i,\ j\ge 0}}a_{i,\ j}x^{i}y^{j}\in A\ |\ a_{0,\ 0}=0 \}=(x,\ y)$

である.

ところが,$\mathfrak{p}^{2}\subsetneq\mathfrak{q}\subsetneq{p}$ である.実際, $x+y^{2}\in\mathfrak{q}\backslash\mathfrak{p}^{2},\ x+y\in\mathfrak{p}\backslash\mathfrak{q}$ である. よって,$\mathfrak{q}$ は $\mathfrak{p}$ の冪とならない.

 

$\sqrt{\mathfrak{a}}$ が素イデアルであっても, $\mathfrak{a}$ が準素イデアルであるとは限らない.その反例が次の例である.

 

$A:=k[x,\ y,\ z]/(xy-z^{2}),\ \mathfrak{p}:=(\bar{x},\ \bar{z})$ を考える.

$\varphi :A\ni\overline{ \displaystyle{\sum_{i=0}^{n}}a_{i}y^{i} +  \displaystyle{\sum_{1\leq k,\ m<\infty \\ 0\leq l<\infty}} b_{k,\ l,\ m}x^{k}y^{l}z^{m} }\ \mapsto\ \displaystyle{\sum_{i=0}^{n}} a_{i}y^{i}\in k[y]$

とすると, この $\varphi$ は $\rm{well-def}.$ な全射準同型で, 核は $\rm{ker}$$\varphi=(\bar{x},\ \bar{z})$ である.よって, 準同型定理より $A/\mathfrak{p}\cong k[y]$ となる. $k[y]$ は整域だから, $\mathfrak{p}$ は $A$ の素イデアルである.

$\mathfrak{q}:=\mathfrak{p}^{2}$ とおくと, $\mathfrak{p}$ が素イデアルなので $\sqrt{\mathfrak{q}}=\mathfrak{p}$ となり, $\sqrt{\mathfrak{q}}$ は素イデアルである.

ところが, $\mathfrak{q}$ は準素イデアルではない. 実際, $\overline{xy-z^{2}}=\bar{0}$ より $\bar{x}\bar{y}=\bar{z}^{2}\in\mathfrak{q}$ だが $\bar{x}\notin\mathfrak{q},\ \bar{y}\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ である.

 

ところが, $\sqrt{\mathfrak{a}}$ が極大イデアルのときは $\mathfrak{a}$ は準素イデアルとなる.

(証明) $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ の元は何乗かすれば $\bar{0}$ になるし, 逆に, 何乗かして $\bar{0}$ になる元は $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ の元である. よって, $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ は $A/\mathfrak{a}$ の冪零元根基である.

$\sqrt{\mathfrak{a}}$ は $A$ で極大なので $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ は $A/\mathfrak{a}$ で極大である.よって $\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ は $A/\mathfrak{a}$ の冪零元根基すなわちすべての素イデアルの共通集合であり,極大イデアルでもあるので, 唯一の素イデアルとなり. 従って唯一の極大イデアルとなる.ゆえに, $A/\mathfrak{a}$ の零因子 $\bar{x}$ をとると $\bar{x}$ は非単元ゆえ $\bar{x}\in\overline{\sqrt{\mathfrak{a}}}$ となり, $\bar{x}$ は冪零元となる.つまり $\mathfrak{a}$ は準素イデアルである. $■$

 

よって, 特に極大イデアル $\mathfrak{m}$ の冪は $\mathfrak{m}-$準素イデアルである.

 

 

さて, イデアルの準素分解というものを紹介する.

$\mathfrak{a}$ が有限個の準素イデアル $\mathfrak{q}_{i}$ たちで 

$\mathfrak{a}=\underset{i=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{i}$

と表せるとき, これは $\mathfrak{a}$ の準素イデアル分解であるという.

特に, 準素分解が次の(1), (2)をみたすとき, その分解は最短であるという.

 (1) どの $\mathfrak{q}_{i}$ も異なる.

 (2) どの $i$ についても $\mathfrak{q}_{i}\nsupseteq\underset{i\neq j}{\cap}\mathfrak{q}_{j}$.

 

じつは,任意に与えられた準素分解に対して, 最短の準素分解を作ることができる.

 

まず, (1) をみたすような分解が作れる. つまり, 各 $\mathfrak{q}_{j_{k}}$ が $\mathfrak{p}_{j}-$準素イデアルなら, $\mathfrak{q}_{j}:=\underset{k}{\cap}\mathfrak{q}_{j_{k}}$ も $\mathfrak{p}_{j}-$準素イデアルである.

(証明) $\sqrt{\mathfrak{q}_{j}}=\sqrt{\underset{k}{\cap}\mathfrak{q}_{j_{k}}}=\underset{k}{\cap}\sqrt{\mathfrak{q}_{j_{k}}}=\underset{k}{\cap}\mathfrak{p_{j}}=\mathfrak{p}_{j}$ なので, あとは $\mathfrak{q}_{j}$ が準素イデアルであることを示せばいい.

$xy\in\mathfrak{q}_{j},\ x\notin\mathfrak{q}_{j}$ なる $x,\ y\in A$ を任意にとる. すると, ある $k$ で $x\notin\mathfrak{q}_{j_{k}}$ より$y\in\sqrt{\mathfrak{q}_{j_{k}}}=\mathfrak{p}_{j}=\sqrt{\mathfrak{q}_{j}}$ となるので,  $\mathfrak{q}_{j}$ は準素イデアルである. $■$

 

また, 次の命題を使えば, (2) をみたすような分解も作れる.

$\mathfrak{q}_{i}$ が $\mathfrak{p}_{i}-$準素イデアルのとき,次が成り立つ.

 (1) $x\in\mathfrak{q}_{i}$ なら $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)=(1)$ である.

 (2) $x\notin\mathfrak{q}_{i}$ なら $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ は $\mathfrak{p}_{i}-$準素イデアルである.

 (3) $x\notin\mathfrak{p}_{i}$ なら $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)=\mathfrak{q}_{i}$ である.

(証明) (1) は当たり前.

(2) について, まず $\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}=\mathfrak{p}_{i}$ を示す.$a\in\sqrt{(\mathfrak{q}_{i})\ :\ x}$ を任意にとると, ある $n\in\mathbb{N}$ で $a^{n}x\in\mathfrak{q}_{i}$ となる. 今, $x\notin\mathfrak{q}_{i}$ なので $a^{n}\in\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ つまり $a\in\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}=\mathfrak{p}_{i}$ となるので, $\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}\subseteq\mathfrak{p}_{i}$ が言えた.逆に $\mathfrak{p}_{i}\subseteq\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}$ は明らかに成り立つ. よって $\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}=\mathfrak{p}_{i}$ である.

ゆえに, あとは $(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ が準素イデアルであることを言えばいい. $ab\in(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x),\ a\notin\sqrt{(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)}=\mathfrak{p}_{i}=\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ なる $a,\ b\in A$ を任意にとる. $abx\in\mathfrak{q}_{i}$ で $a\notin\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ だから, $bx\in\mathfrak{q}_{i}$ である. つまり $b\in(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ となるので, $(\mathfrak{q}_{i})\ :\ x$ は準素イデアルである.

(3) は, $\mathfrak{q}_{i}\subseteq(\mathfrak{q}_{i}\ :\ x)$ は当たり前で,逆も少し考えたらわかる. $■$ 

 

準素イデアル分解の例をみてみる.

 

$A:=k[x,\ y]$ で $\mathfrak{a}:=(x^{2},\ xy)$ とする. $xy\in\mathfrak{a}$ だけど $x\notin\mathfrak{a},\ y\notin\mathfrak{a}$ なので, $\mathfrak{a}$ 自身は準素イデアルではない.

$\mathfrak{q}_{1}:=(x),\ \mathfrak{q}_{2}:=(x,\ y)^{2}$ とおくと, $\mathfrak{q}_{1}$ は素イデアルゆえ準素イデアルだし, $(x,\ y)$ は極大イデアルなので $\mathfrak{q}_{2}$ は準素イデアルである. よって $\mathfrak{a}=\mathfrak{q}_{1}\cap\mathfrak{q}_{2}$ は準素分解であり, これは最短である.

また, $\mathfrak{q}_{3}:=(x^{2},\ y)$ とおくと $\mathfrak{a}=\mathfrak{q}_{1}\cap\mathfrak{q}_{3}$ も最短な準素分解となっている.

 

この例から分かるように,準素分解可能な与えられたイデアルに対して, その準素分解の仕方は一意ではない.

しかし, $\mathfrak{p}_{i}$ たちからなる集合は $\mathfrak{a}$ に対して一意であったり, $\mathfrak{p}_{i}$ たちの一部からなる孤立集合と呼ばれるものに対して対応する $\mathfrak{q}_{i}$ たちの共通部分は $\mathfrak{a}$ に対して一意であったりと, ある意味での一意性は成り立つ. (書くのが面倒になってきたし本を読んだら分かるので省略.)

 

 

最短の準素分解 $\mathfrak{a}=\underset{i=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{i},\ \mathfrak{p}_{i}:=\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ に対して次が成り立つ.

$\underset{i=1}{\overset{n}{\cup}}\mathfrak{p}_{i}=\{x\in A\ |\ (\mathfrak{a}\ :\ x)\neq\mathfrak{a}\}$.

(証明) $x\in\underset{i}{\cup}\mathfrak{p}_{i}$ を任意にとると, ある $i$ で $x\in\mathfrak{p}_{i}=\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ なので, $x$ のある冪 $x^{n}$ で$x^{n}\in\mathfrak{q}_{i}$ となる. そのような自然数のうち最小のものを $n$ とする. また, $i$ に対して準素分解の最短性から $y\in\underset{j\neq i}{\cap}\mathfrak{q}_{j},\ y\notin\mathfrak{q}_{i}$ がとれる. この $n$ と $y$ に対して, $(x^{n-1}y)x=x^{n}y\in\underset{k=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{k}=\mathfrak{a}$ より $x^{n-1}y\in(\mathfrak{a}\ :\ x)$ だが, $x^{n-1}y\notin\mathfrak{q}_{i}$ より $x^{n-1}y\notin\mathfrak{a}$ となる. つまり $(\mathfrak{a}\ :\ x)\nsubseteq\mathfrak{a}$ となる.

逆に, $(\mathfrak{a}\ :\ x)\nsubseteq\mathfrak{a}$ なる $x\in A$ を任意にとると, $y\notin\mathfrak{a}$ つまり $\exists i,y\in\mathfrak{q}_{i}$ なる $y\in(\mathfrak{a}\ :\ x)$ がとれる. このとき $xy\in\mathfrak{a}=\underset{k=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{k}$ より $xy\in\mathfrak{q}_{i}$ となるので, $x\in\mathfrak{p}_{i}$ となる. $■$

 

特に,一般の環 $A$ で

 $x$ が $A$ の零因子である.

  $\Longleftrightarrow$  ある $y\neq 0$ で $xy=0$ となる.

  $\Longleftrightarrow$  ある $y\neq0$ で $y\notin(0\ :\ x)$となる.

  $\Longleftrightarrow$  $(0\ :\ x)\nsubseteq 0$である.

が成り立つので, $0$ が準素分解可能で $0=\underset{i}{\cap}\mathfrak{q}_{i}$ のとき $A$ の零因子の集合 $D$ は $D=\underset{i}{\cup}\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}$ となる.

 

 

与えられたイデアルに対して, 準素分解がいつでも可能であるとは限らない. (準素分解できないイデアルの例はよく分からないけど・・・)

しかし, ネーター環においてはイデアルは常に準素分解できるので, 最後にそれを示す.

 

その準備として,  既約イデアルというものを導入しておく.

イデアル $\mathfrak{a}$ について次が成り立つとき, $\mathfrak{a}$ は既約イデアルであるという.

$\mathfrak{a}=\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ なら $\mathfrak{a}=\mathfrak{b}$ または $\mathfrak{a}=\mathfrak{c}$となる.

 

ネーター環の既約イデアルは,準素イデアルである.

(証明) 背理法で示す.

$A$ をネーター環として, 準素でない既約イデアル $\mathfrak{q}$ が存在すると仮定する. すると, $xy\in\mathfrak{q},\ x\notin\mathfrak{q}, y\notin\sqrt{\mathfrak{q}}$ なる $x,\ y\in A$ がとれる.

この $y$ に対して, イデアルの列 $\mathfrak{a}_{n}:=(\mathfrak{q}\ :\ y^{n})$ を考える.( $y^{0}=1$ とする.) $A$ のネーター性から列 $\mathfrak{a}_{0}\subseteq\mathfrak{a}_{1}\subseteq...$ は途中のある $n$ で止まる.

この $x,\ y,\ n$ に対して $\mathfrak{b}:=\mathfrak{q}+(x), \mathfrak{q}+(y^{n})$ とおくと, $\mathfrak{q}=\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ となることが次のように分かる. $\mathfrak{q}\subseteq\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ は明らかである. 逆に $z\in\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ を任意にとると, ある $p,q\in\mathfrak{q},\ a,b\in A$ で $z=p+ax=q+by^{n}$ と表せて, このとき $by^{n+1}=py+axy-qy\in\mathfrak{q}$ となるので $b\in\mathfrak{a}_{n+1}=\mathfrak{a}_{n}$ となる. よって $z=q+by^{n}\in\mathfrak{q}$ つまり $\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}\subseteq\mathfrak{q}$ となる.

ところで, $x\in\mathfrak{b},\ x\notin\mathfrak{q}$ より $\mathfrak{q}\neq\mathfrak{b}$ だし, $y^{n}\in\mathfrak{c},\ y^{n}\notin\mathfrak{q}$ より $\mathfrak{q}\neq\mathfrak{c}$ である.

これらは, $\mathfrak{q}$ が既約であることに反する. よって, $A$ の既約イデアルは必ず準素イデアルである. $■$

 

また,ネーター環において,任意のイデアルは既約イデアル分解ができる.

(証明) 背理法で示す.

ネーター環 $A$ のイデアルで既約分解できないものたちの集合を $\mathbb{X}$ として, $\mathbb{X}\neq\emptyset$ と仮定する.

$A$ のネーター性から $\mathbb{X}$ は極大元をもつので, そのひとつを $\mathfrak{a}$ とする. すると, $\mathfrak{a}$ 自身は既約でないので, ある $\mathfrak{b}\supsetneq\mathfrak{a},\ \mathfrak{c}\supsetneq\mathfrak{a}$ で $\mathfrak{a}=\mathfrak{b}\cap\mathfrak{c}$ と表せる. $\mathfrak{a}$ の極大性より $\mathfrak{b},\ \mathfrak{c}\notin\mathbb{X}$ なので, $\mathfrak{b},\ \mathfrak{c}$ は既約分解できる. つまり, ある既約イデアルたち $\mathfrak{q}_{i}$ で $\mathfrak{b}=\underset{i=1}{\overset{n}{\cap}}\mathfrak{q}_{i},\ \mathfrak{c}=\underset{i=n+1}{\overset{m}{\cap}}\mathfrak{q}_{i}$ と表せる. したがって $\mathfrak{a}=\underset{i=1}{\overset{m}{\cap}}\mathfrak{q}_{i}$ となるが, これは $\mathfrak{a}\in\mathbb{X}$ に矛盾する.

よって $\mathbb{X}=\emptyset$ となる. つまり ネーター環の任意のイデアルは既約分解できる. $■$

 

以上から, ネーター環イデアルはすべて準素分解可能であることが分かった.

わーい!

 

おしまい. 

 

 

参考文献

M. F.Atiyah, I. G. MacDonald著. 新妻弘訳. 可換代数入門. 共立出版, 2006.

 

素イデアルの拡大とか縮約とか

先週から,友達と自主ゼミでアティマク可換代数入門を読み始めた.

せっかくだから自分の発表の当番のところをまとめとこうと思う.

発表が終わってから何か気づいたり気づかされたりしたら修正したりするかも.

 

明日は1.7節「拡大と縮約」のところを発表する(予定).

 

 

$A,B$を環として,$f:A\rightarrow B$を環準同型とする.

$\mathfrak{a},\mathfrak{b}$をそれぞれ$A,B$のイデアルとする.

 

$f(\mathfrak{a})$は$B$のイデアルとなるとは限らない.

実際,たとえば$f:\mathbb{Z}\ni n\mapsto n\in\mathbb{Q}$で$\mathfrak{a}:=2\mathbb{Z}$とすると,$f(\mathfrak{a})=2\mathbb{Z}$だが,$\frac{1}{2}×2=1\notin2\mathbb{Z}$なのでこれは$B$のイデアルでない.

 

そこで,$f(\mathfrak{a})$の生成するイデアル$(f(\mathfrak{a}))=\{\displaystyle\sum_{i=0}^{n}f(x_{i})b_{i}|n\in\mathbb{N},x_{i}\in\mathfrak{a},b_{i}\in B\}$を$\mathfrak{a}$の拡大と呼び$\mathfrak{a}^{e}$と記す.

 

さっきの例では$\mathfrak{a}^{e}=\mathbb{Q}$となる.($1=\frac{1}{2}×2\in (2\mathbb{Z})$だから.)

 

一方,$f^{-1}(\mathfrak{b})$は$A$のイデアルとなるので,これを$\mathfrak{b}$の縮約と呼び$\mathfrak{b}^{c}$と記す.(補集合の記号とまぎらわしいよねコレ.)

 

 

$\mathfrak{b}$が$B$の素イデアルなら,縮約も$A$の素イデアルとなる.

実際,$xy\in\mathfrak{b}^{c}$なる$x,y\in A$を任意にとると$f(x)f(y)=f(xy)\in\mathfrak{b}$より$f(x)\in\mathfrak{b}$または$f(y)\in\mathfrak{b}$つまり$x\in\mathfrak{b}^{c}$または$y\in\mathfrak{b}^{c}$となる.

 

一方で,$\mathfrak{a}$が$A$の素イデアルであってもその拡大が$B$で素イデアルとなるとは限らない.

(あとで$\mathbb{Z}[\sqrt{{-1}}]$の例で確認する.)

 

$f$が全射のときは${\rm ker}f\subseteq\mathfrak{a}$で$\mathfrak{a}$が$A$の素イデアルなら$f(\mathfrak{a})$は$B$の素イデアルとなる.

それは次のようにわかる.

$xy\in f(\mathfrak{a})$なる$x,y\in B$を任意にとるとある$a,b\in A$で$f(a)=x,f(b)=y$であり,$c\in\mathfrak{a}$で$f(c)=xy$となる.

このとき$f(ab-c)=f(a)f(b)-f(c)=xy-xy=0$より$ab-c\in{\rm ker}f$だから$ab-c\in\mathfrak{a}$となり,$ab=(ab-c)+c\in\mathfrak{a}$となる.

よって$a\in\mathfrak{a}$または$b\in\mathfrak{a}$つまり$x\in f(\mathfrak{a})$または$y\in f(\mathfrak{a})$となる.

 

 

さて,素イデアルの拡大の例として,$f:\mathbb{Z}\ni n\mapsto n\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$で$\mathbb{Z}$の素イデアルの拡大がどうなるか考えてみよう.

 

 

まず,$\,mathbb{Z}$の素数$2$の生成する素イデアル$2\mathbb{Z}$を考えてみる.

$(2\mathbb{Z})^{e}=(1+\sqrt{-1})^{2}\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$つまり$(2\mathbb{Z})^{e}=2\sqrt{-1}\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$となることがすぐわかるが,これは$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$の素イデアルではない.

実際,$1+\sqrt{1}\notin2\sqrt{-1}\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$だけど$(1+\sqrt{-1})(1+\sqrt{-1})=2\sqrt{-1}\in 2\sqrt{-1}\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$となる.

 

 

次に,$\mathbb{Z}$の素数$p\equiv 1 \mod 4$の生成する素イデアルの拡大を考えてみよう.

 

 

その前に,$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$が$\rm PID$であること,つまり任意のイデアルがある1つの元で生成されるような整域であることを示しておく.

 

まず$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$が整域であることを示す.

$xy=0,x\neq 0$なる$x,y\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$を任意にとる.

$a,b,c,d\in\mathbb{Z}$で$x=a+b\sqrt{-1},y=c+d\sqrt{-1}$と表せる.

$xy=(ac-bd)+(ad+bc)\sqrt{-1}$より$ac-bd=0,ad+bc=0$となる.

$x\neq 0$より$b\neq 0$なので$d=frac{ac}{b}$と表せて,$a\frac{ac}{b}+bc=0$つまり$(a^{2}+b^{2})c=0$となる.

$x\neq 0$より$a\neq 0$なので$a^{2}+b^{2}\neq 0$だから$c=0$となる.

このとき$d=\frac{ac}{b}=0$となる.

よって$y=0$となるので$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$は整域.

 

次に,$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$は余りのある割り算みたいなことができる.

実際,任意にとった$a,b\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$に対して,$|m-{\rm Re}\frac{a}{b}|\leq\frac{1}{2},|n-{\rm Im}\frac{a}{b}|\leq\frac{1}{2}$なる$m,n\in\mathbb{N}$で$q:=m+n\sqrt{-1},r:=a-bq$とおくと,$a=bq+r,0\leq |r|<|b|$となる.

よって$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$はユークリッド整域で,したがって$\rm PID$となる. 

 

 

また,$\rm PID$において,既約元の生成するイデアルは素イデアルとなることも示しておく.

ただし,「$p=xy$なら$x$または$y$は単元である」が成り立つような$p$を既約元と呼ぶ.

 

$A$を$\rm PID$,$p$を$A$の既約元とする.

$ab\in(p),b\notin(p)$なる$a,b\in A$を任意にとる.

イデアルの和$(p)+(b)$に対して,$A$は$\rm PID$だからある$c\in A$で$(p)+(b)=(c)$と表せる.

このとき,$(p)\underset{\subset}{\neq}(c)$である.($(c)=(p)$だと$b\in(p)+(b)=(p)$となり矛盾するから.)

よって,ある非単元$k\in A$で$p=kc$と表せる.

今,$p$は既約だから$c$は単元となり,したがって$(p)+(b)=(c)=A$となる.

このとき$1\in A=(p)+(b)$となり,ある$x,y\in A$で$1=px+by$と書ける.

この両辺に$a$をかけて$a=apx+aby\in (p)$を得るので,$(p)$は素イデアルである.

 

 

さて,$p\equiv 1\mod 4$で$p\mathbb{Z}$の拡大を考えてみよう.

 

この$p$はある$m,n\in\mathbb{Z}$で$p=m^{2}+n^{2}$と表せる.(フェルマーの平方和の定理.)

つまり$p=(m+n\sqrt{-1})(m-n\sqrt{-1})$なので$(p)^{e}=(m+n\sqrt{-1})(m-n\sqrt{1})$となる.

 

$(m+n\sqrt{-1})$と$(m-n\sqrt{-1})$は異なるイデアルであることを背理法で示す.

これらが同じイデアルであると仮定すると,ある$a,b\in\mathbb{Z}$で$m+n\sqrt{-1}=(m-n\sqrt{-1})(a+b\sqrt{-1})=(ma+nb)+(mb-na)\sqrt{-1}$と表せる.

このとき$m=ma+nb,n=mb-na$より$m(1-a)=nb,n(1+a)=mb$となる.

$a=1$の場合$n=0$が導かれて,$p$が素数であることに矛盾する.

$a\neq 1$の場合,$m=\frac{b}{1-a}n$より$n(1+a)=\frac{b^{2}}{1-a}n$つまり$a^{2}+b{2}=1$となる.

$a,b\in\mathbb{Z}$より$a=0$または$b=0$となるが,$a=0$のときは$m=0$が導かれ,$b=0$のときは$m=-n$が導かれ,いずれにしても$p$が素数であることに反する.

よって,$(m+n\sqrt{-1})$と$(m-n\sqrt{-1})$は異なるイデアルである.

 

また,$(m+n\sqrt{-z})$は$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$の素イデアルであるのでそれを示す.

まず,$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$の単元は$\pm 1,\pm\sqrt{-1}$のみである.

実際,$x$が単元ならある$y$で$xy=1$となるが,このとき$|x||y|=1$だから,$|x|,|y|\in\mathbb{N}$に注意して$|x|=1$を得るので$x=\pm 1,\pm\sqrt{-1}$となる.

$m+n\sqrt{-1}=ab$なる$a,b\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$を任意にとると,両辺の絶対値を取り$p=|a||b|$となる.

$|a|,|b|\in\mathbb{N}$で,$p$は素数だから,「$|a|=1$かつ$|b|=p$」または「$|a|=p$かつ$|b|=1$」となる.

つまり$|a|$または$|b|$が単元となり,$m+n\sqrt{-1}$は既約であると分かる.

よって,$(m+n\sqrt{-1})$は素イデアルである.

 

同様にして$(m-n\sqrt{-1})$も素イデアルである.

 

以上から,$p\equiv 1\mod 4$のとき$p\mathbb{Z}$の拡大は2つの異なる素イデアルの積となる.

 

 

最後に,素数$p\equiv 3\mod 4$の生成する素イデアル$p\mathbb{Z}$の拡大を考えてみよう.

 

まず,この$p$で$p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$が素イデアルであることを示す.

$p=ab$なる$a\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$,非単元$b\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$を任意にとる.

$p=ab$の両辺の絶対値をとると$p^{2}=|a||b|$となるが,$b$は非単元だから$|b|=p$または$|b|=p^{2}$となる.

$|b|=p$の場合ある$x,y\in\mathbb{Z}$で$b=x+y\sqrt{-1}$と表せて$|b|=x^{2}+y^{2}\equiv 0,1,2\mod 4$だが,これは$|b|=p\equiv 3\mod 4$に反する.

よって$|b|=p^{2}$つまり$|a|=1$となり,$p$は既約となり,従って$p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$は素イデアルである.

 

次に,$(p\mathbb{Z})^{e}=p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$となることを示す.

$\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$は$\rm PID$だから,$(p\mathbb{Z})^{e}$はある$a\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$で生成される.

このとき,$a$は単元ではない.

実際,$a$が単元であると仮定すると$1\in(a)=(p\mathbb{Z})^{e}$よりある$m_{i},n_{i}\in\mathbb{Z}$で$1=\displaystyle\sum_{i=0}^{n}p(m_{i}+n_{i}\sqrt{-1})=p\displaystyle\sum_{i=0}^{n}+p\displaystyle\sum_{i=0}^{n}n_{i}\sqrt{-1}$となるが,$1=p\displaystyle\sum_{i=0}^{n}m_{i}$はおかしい.

$p\in(p\mathbb{Z})^{e}=(a)$よりある$b\in\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$で$p=ab$と表せる.

$p$は既約元で,$a$は単元でないので,$b$は単元である.

よって,$(p\mathbb{Z})^{e}=(a)=(p)$となる.

 

以上から,$(p\mathbb{Z})^{e}$は素イデアルである.

 

 

イデアルの縮約や拡大を見てみようみたいな話でしたー.

おやすみなさい.

 

 

 

ベクトル空間とか環上の自由加群とかの基底の元の個数の話

ぱいですこんにちは.

 

 

基底の個数の話を知って面白いと思ったので書きます.

その前にいろいろ言葉の定義をおさらいしておこうと思います.

 

 

足し算や引き算ぽいことができる空間を群と呼んで,しかも演算が可換なら特にアーベル群と呼んだりします.

アーベル群でしかも掛け算ができて分配法則の成り立つ空間を環と呼びます.

掛け算の可換な環を可換環といいます.

環で割り算もできる空間を体と呼びます.

 

アーベル群$M $に対して環$R$の元によるスカラー倍の作用が定義されていて任意の$\lambda,\mu\in R,x,y\in M $で次が成り立つとき,$M $を左$R-$加群といいます;

・$\lambda(x+y)=\lambda x+\lambda y$

・$(\lambda+\mu)x=\lambda x+\mu x$

・$\lambda(\mu x)=(\lambda\mu)x$

・$1_{R}x=x$

特に体上の加群をベクトル空間といったりします.

たとえば環$R$自身は左$R-$加群とみなせます.

環の直積とかも加群とみなせます.

 

左$R$加群$M,N$に対して写像$M\rightarrow N$が和とスカラー倍を保つとき,この写像を$R$準同型と呼びます.

全単射な$R$準同型写像を$R$同型写像と呼び,そのような写像が存在するとき$M $と$N$は$R$同型であるといいます.

これは,「和やスカラー倍の構造が同じような空間」みたいなもんです.

同型という関係は,加群同士の同値関係となります.

 

 

左$R$加群$M $の部分集合$B$について,どの有限個の$x_{1},x_{2},...,x_{n}\in B$に対しても$\lambda_{1}x_{1}+\lambda_{2}x_{2}+...+\lambda_{n}x_{n}=0\Rightarrow\lambda_{1}=\lambda_{2}=...\lambda_{n}=0(\lambda_{1},...\lambda_{n}\in R)$が成り立つとき,$B$は$R$上で一次独立であるといいます.

$B$が一次独立で$M $のどの元も$B$の元のスカラー倍の和で一意的な表し方で書けるとき,$B$を$M $の$R$上の基底と呼びます.

 

ベクトル空間は必ず基底を持つことが知られてます.

実際,ベクトル空間$V$の一次独立な集合全体を$\mathscr{B}$とするとTukeyの補題から$\mathscr{B}$は極大元$B$を持ちますがこれが$V$の基底となります.

しかも,基底をどんなふうにとってもその元の個数は必ず一定であることもよく知られています.

 

環上の加群は一般には基底を持つとは限らないです.

たとえば$\mathbb{Q}$は$\mathbb{Z}$上の加群ですが基底を持ちません.

実際,$\mathbb{Q}$が基底$\{q_{1},...,q{n}\}$を持つと仮定すると,$q:=\frac{1}{2}q_{1}+...+\frac{1}{2}q_{n}$に対してある$a_{i}\in\mathbb{Z}$たちで$q=a_{1}q_{1}+...+a_{n}q_{n}$と表せて表示の一意性から$a_{i}=\frac{1}{2}$となりますが,これは$a_{i}\in\mathbb{Z}$に反します.

 

 

環上の加群で基底を持つようなものを,自由加群といいます.

 

可換環上の自由加群については,基底をどんなふうに取っても基底の元の個数は一定であることが知られています.

でも,非可換環上の自由加群については,基底の取り方によって基底の元の個数が変わってしまうことがあるので,それについて書いて終わります.

 

 

体$\mathbb{k}$上のベクトル空間$\displaystyle V:=\prod_{i=0}^{\infty}\mathbb{k}$に対して,線形写像$V\rightarrow V$全体の集合を$R$とします.

$R$は,普通の和と写像の合成で非可換環となります.

 

線形写像$V×V\rightarrow V$の全体を$S$とすると,これは普通の和と写像の合成によるスカラー倍で左$R$加群となります.

 

$V$は無限次元だから同型写像$\varphi:V×V\rightarrow V$が取れて,これによって$R\ni\lambda\rightarrow\lambda\circ\varphi\in S$は$R$同型写像となります.

つまり$R$と$S$は$R$同型です.

 

各$f\in S$に対して$p_{f},q_{f}:V\rightarrow V$を$p_{f}(x)=f(x,0),q_{f}=f(0,x)$と定めると,写像$S\ni f\rightarrow (p_{f},q_{f})\in R×R$は$R$同型写像となります.

つまり$S$と$R×R$は$R$同型です.

 

以上から$R$と$R×R$は$R$同型です.

$\psi:R×R\rightarrow R$を$R$同型写像とすると,$R×R$の$R$上の基底は$\{(1_{R},0_{R}),(0_{R},1_{R})\}$とも取れるし${\psi(1_{R})}$とも取れて,基底の濃度が一意に定まらない例となっています.

 

 

なんか勢いでわーって書いて割りと適当なので割りと適当ですけど書きたいことは取り敢えず書けたと思うのでおしまいにします.

ごはん食べてきますさよなら~~

 

 

参考文献

桂利行,代数学<2>環上の加群東京大学出版会,2007